【識者評論】翁長雄志前知事の政治姿勢 沖縄の民意を命懸けで体現 佐藤学・沖縄国際大学教授


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 命を懸けて辺野古新基地建設を止めるという姿勢を見せ続けた政治家だ。逝去して1年がたつ。その後の県知事選、県民投票、衆院3区補選、参院選は翁長氏が代弁してきた県民の民意の表れだ。翁長氏は沖縄の歴史的に強いられてきた苦しみを自身の言葉で日本政府や全国メディアに発信した。かつて自民党県連の有力政治家で辺野古新基地建設を進める立場から、辺野古だけは認められないという姿勢に転じ、保革を取り込んだ「オール沖縄」勢力を築いたことは沖縄政治史でも大きな転換期と言えるだろう。

 翁長氏が残した課題は二つある。一つは「オール沖縄」勢力をどう維持するかだ。保守の勢力をどうつなぎとめ、さらにどう取り込んでいくかだ。もう一つは辺野古新基地建設を止める手法が裁判ということだ。翁長氏も苦闘した。国の土俵で闘うことは厳しい面がある。司法判断とは違う側面で世論を喚起し、政治的に辺野古を止めることも並行して進めなければならない。後継となった玉城県政がどうかじ取りをしていくか注視していく必要がある。

 全国で始まった米軍基地引き取り運動なども翁長氏がまいた種とも言えるだろう。「沖縄が気の毒」という話ではなく、基地問題は日本の安全保障全体の問題だと翁長氏は自身の言葉で主張してきた。「どちらが甘えているか」「魂の飢餓感」など強烈に印象に残っている。

 政府が沖縄の民意を顧みる姿勢を見せない中、翁長氏が命を懸けて体現した県民の民意をどう反映させていくかが今後も問われ続ける。

 (政治学)