[日曜の風]日韓関係悪化 友情、引きさかないで


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 私の郷里・北海道の主力産業のひとつは観光。特に最近は、韓国、中国、台湾などアジアからの旅行者が増えていた。その観光産業が韓国との関係悪化で打撃を受けている、と先日、帰省した際に新聞で目にした。沖縄でも同じことが起きているのではないだろうか。

 心を痛めつつ東京に戻り、電車に乗ると、その時間帯にしてはとても混んでいる。ほとんど若い女性客だ。その人たちの手にしているグッズなどから、近くで韓国アイドルたちの大きなコンサートがあり、その帰りだとわかった。

 ほとんどは日本人と思われるが、満面の笑顔で「カッコよかったね」「また見たい!」と話している彼女たちを見ていると、新聞やテレビで報じられる「日韓関係の悪化」などウソのようであった。

 東京でも日韓の連帯を呼びかける集会があり、SNSで紹介されていた参加者の自作プラカードが目にとまった。日本人や韓国人が輪になっているイラストの真ん中に、手書き文字で「もう友だちです 引きさかないで」と書かれていた。見ていると涙が出てくる。

 そう、いくら政治の世界で対立があっても、一部の人はその影響を受けても、日本と韓国の人たちどうしはすでに「友だち」になっており、その関係はちょっとしたことでは揺るがない。そして、それが無理やり引きさかれることなど、決してあってはならないのだ。

 今、東京で日本と韓国の女性たちが中心となり、「私たちはなかよし」というイベントを行おうという動きが始まっており、私も手伝いをしている。日本の国内でも、日本と外国でも、人と人とが結んだ友情の関係は簡単には消えない。

 もう友だちです、引きさかないで。今こそ大きな声で言いたい。

(香山リカ、精神科医・立教大教授)