海の恵みに「一塩懸命」 もっと良い塩求めて試行錯誤 うるま市・高江洲製塩所の高江洲優さん(47)


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 8月も半ばを迎えたが、暑さはまだまだ続く。マリンレジャーを楽しんだり、涼を求めて避暑地を訪ねるというのが、この季節の過ごし方。ところが炎天下の中、あるいは蒸し風呂のような室内で汗を流しながら仕事に打ち込む人たちがいる。

大量の湯気が立ち込める中、塩の釜揚げ作業をする塩職人の高江洲優さん=24日、うるま市勝連の高江洲製塩所(新里圭蔵撮影)

 室温50度に迫る工房に足を踏み入れると、全身から汗が噴き出した。太陽や風の力で2、3日かけて海水を濃縮し、110度にもなる平釜で炊き上げる。蒸気を体に浴びながら、高江洲製塩所の塩職人・高江洲優(まさる)さん(47)は白い結晶をかき集める。

 沖縄本島から海中道路や橋でつながる、うるま市の浜比嘉島。フクギや石垣に囲まれた集落を抜け、島の奥深くに製塩所はある。運送業から32歳で転職、現在の場所にあった本土系の塩会社で働いたが、後に同社は撤退した。「周りに住宅も畑もなく、生活排水や農薬の心配もない。不純物のない海水が取れて塩を作るならここが一番良い」。ほれ込んだ最適の地から離れられず、2009年に同地で製塩所を立ち上げて海水100%の天然塩を作り始めた。

 製塩法は昔ながらの流下式塩田。竹ぼうき千本分の竹枝を組んだ施設で海水を循環させ、時間をかけて水分を蒸発させると濃縮した海水ができる。雨の予報があると作業を止め、海水と雨が混ざれば廃棄する。自然の力に恩恵を受け、時には天気に泣かされる。

 濃縮した海水を炊き上げる作業は「何度も熱中症になった」ほど過酷だ。結晶化するタイミングを見て約30分、水分を切りながら塩をかき集める。「お客さんにおいしいと言ってもらえると、喜びもひとしお」「一塩懸命、手塩にかけて作る」とギャグを織り交ぜながら、にこやかに話す。

 取水から乾燥まで約1週間。味と栄養のバランスを吟味する。「塩と向き合って対話するんです。その先にまた何かがあるはず。もっと良い塩ができると思う」と理想を描く。果てのない探究心で、試行錯誤が続く。
 (琉球新報社会部・大橋弘基)

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 【メモ】 「浜比嘉島の塩工房 高江洲製塩所」は、沖縄県うるま市勝連比嘉1597。見学や塩作り体験もある。営業は午前10時~午後4時(土曜は3時)。休業日はホームページ(hamahigasalt.com)で。(電話)098(977)8667。