「葵トリオ」迫力の三重奏 沖縄初公演


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ブラームス「ピアノ四重奏曲 第1番 ト短調 Op.25より第4楽章」で激しくダイナミックに演奏する葵トリオの小川響子(左端)、秋元孝介(左から2人目)、伊東裕(右端)と粟國朝陽=7日、那覇市のパレット市民劇場

 クラシック音楽の普及を目指すビューローダンケ(渡久地圭代表)主催のコンサートシリーズ第1回「葵トリオ」が7日、沖縄県那覇市のパレット市民劇場であった。「葵トリオ」はミュンヘン国際音楽コンクールで日本人の団体として初めて1位に輝いた小川響子(バイオリン)、伊東裕(チェロ)、秋元孝介(ピアノ)によるユニット。「葵トリオ」としては沖縄初公演の3人は、呼吸を合わせながらストレートで激情的な演奏を繰り広げ、終始観客をうならせた。

 幕開けはハイドン「ピアノ三重奏曲 第27番 ハ長調 Hob.XV:27」。第1楽章は強弱を付けながら跳ねるようなタッチで全身を揺らし、第2楽章では爽やかな風が吹くように若々しい音色を響かせた。第3楽章では秋元が軽快にピアノを鳴らして、小川のバイオリンと伊東のチェロが爽快感あふれる演奏を聴かせた。

 シューベルト「ノットゥルノ 変ホ長調 D897 Op.148」では秋元がゆったりと和音を響かせ、小川と伊東がハープのように滑らかなピチカートを鳴らし、観客の心をつかんだ。

 中盤ではチャレンジシップゲストとして西原町出身で現在東京音楽大学3年のビオラ奏者、粟國朝陽(あわくにあさひ)が登場し、難曲と言われているブラームス「ピアノ四重奏曲 第1番 ト短調 Op.25より第4楽章」を披露した。ピアノ、バイオリン、ビオラ、チェロを次々と織り交ぜて、荒れ狂うような勢いのある演奏を繰り広げた。粟國は3人の迫力のある音に、堂々と深みのあるビオラの音色を重ねた。演奏後、会場からは感動のため息が聞こえ、盛大な拍手が送られた。

 トリはメンデルスゾーン「ピアノ三重奏曲第2番 ハ短調 Op.66」。葵トリオはここでも全身を激しく揺らしながら壮大な演奏を繰り広げた。第1楽章では重厚で深みのあるピアノとチェロの音色が印象的だった。第2楽章では小川のバイオリンと伊東のチェロがきれいに重なり、心地よい三重奏を響かせた。第3楽章のスケルツォに差し掛かると、秋元のピアノが情感豊かな演奏を聴かせ会場を彩り、最後の第4楽章では硬軟を織り交ぜながら叙情的な演奏で締めくくった。

 「葵トリオ」は最後まですさまじく、魅力的な公演だった。オーケストラのような迫力のある三重奏と一糸乱れぬ息を合わせた演奏は見事だった。3人の中に溶け込み、調和したビオラの粟國も素晴らしかった。また4人で必ず再演を実現してほしいと感じた。
 (金城実倫)