焦点インタビュー 後継者不足、EPA発行… 普天間朝重JAおきなわ理事長が見据える沖縄農業の将来とは


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 沖縄県の農業産出額は2年連続で1千億円を超えて好調に見える一方、依然として販売農家数は高齢化による離農や後継者不足から減少傾向にある。環太平洋連携協定(TPP)や欧州との経済連携協定(EPA)の発効などで国内農業を取り巻く環境も激変。米国から攻勢を掛けられている日米貿易交渉では大幅な対米関税引き下げで国内農産品への打撃が懸念される。6月21日付でJAおきなわ理事長に就任した普天間朝重氏(62)に県内農業の見通しなどを聞いた。

 ―就任の抱負は。

 「全国全てのJAは三つの危機に直面している。農業の危機、組織・事業・経営の危機、協同組合の危機だ。その中で協同組合としての役割を沖縄から発信する使命があると感じている。農協は農家だけでなく、地域全体を守る存在だ。特に離島地域で農協は地域の人から頼られている。スーパーがない地域には移動購買車を出し、地域全体を支えている。農協は協同組合という『運動体』で、少しでも生活を良くしようと集まったものだ。その基本を忘れることなく、社会的弱者に頼られる農協であり続けるよう努める」

 ―経営上の課題は。

 「マイナス金利の長期化で信用事業収支の落ち込みが経営全般に影響を与えている。信用事業と共済事業の収益で経済事業の赤字をカバーするという従来のビジネスモデルが成り立たなくなるだろう。経済事業の総点検を行い、全体的な収支バランスの均衡を図っていく必要がある」

 ―農業分野での課題は。

 「島しょ県の特殊性をどう理解し、対処していくかが大きな課題だ。基幹作物であるサトウキビの8割、肉用牛の7割の生産を離島が担っている。農業生産の拡大という観点で離島対策が重要な問題になるが、離島では人口減少が著しく、担い手が不足して高齢化が進んでいる。生産基盤は今後も弱体化するだろう。JAおきなわだけでは限界があるため、県や国でもどのように離島を守っていくか考える必要がある」

 「輸出戦略室を設置し、昨年4月からクルーズ船に県産農畜産物の提供を始めた。18年度の輸出全体の売り上げは約7千万円で、その中でクルーズ船が6千万円を突破した。今期から本格的に海外輸出に取り組むが、4―6月期の売り上げは既に3千万円を超えた。今期は1億円を突破するだろう。台湾、香港、シンガポールをターゲットにしており、今後拡大できる可能性があれば対象の国を増やしていきたい」

 ―人手不足にどう対応するか。

 「現在、子会社のくみきと第一農薬が協力してドローンによる農薬自動散布を宮古島で実験している。人手が掛からずに済むよう、いろいろな機械の発明をくみきに要請している。外国人を採用して人手不足を補っているが、いつまでも外国人にいてもらえるわけではない。若い人に農業に興味を持ってもらえるよう、新規就農を呼び掛ける研修会を通して人材を確保しようとしている。行政も含めて関係団体全てで取り組まなければならない」
 (聞き手 石井恵理菜)