訴訟で「人権」問えるか 辺野古問題 登壇者、見解分かれる


社会
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県民投票とその後について意見を交わす登壇者ら=17日、那覇市職員厚生会館

 シンポジウムでは、辺野古新基地建設問題が人権問題として訴訟で争うことができるかどうかについて意見のずれが浮き彫りになった。

 県の弁護団に加わる加藤裕弁護士は個人的な見解として「辺野古新基地建設によって個人の人権が侵害されているかどうかを訴訟で争うのは簡単ではない」と述べた。理由として憲法が保障しているのは個人の尊厳に基づく人権であり、集団の人権は対象にならないためだとした。

 これに対し「新しい提案」実行委員会責任者の安里長従氏は「集団の人権という観念にとらわれなくても、沖縄に住む人たち諸個人の権利を侵害している問題として対応可能ではないか」と述べ、憲法で保障する人権を主張することと共に、国際人権規約などの趣旨に沿った適合的解釈を求めることが可能だとした。

 辺野古新基地建設問題が沖縄の人々の人権の問題だという認識は、故翁長雄志前知事の国連人権理事会での訴えや国内の憲法研究者131人が声明で「新基地建設の問題は人権問題」と主張したように広まりつつある。

 しかし県民全体の人権という集団の人権の問題を巡る議論はほとんどなされていないのが現状だ。

 辺野古新基地建設の強行は、集団の成員である沖縄の人たち一人一人の基本的な自由を保障する幸福追求権や平和的生存権が制約され、それらが県外と比べて等しく保障されていないと言えないのかどうか。集団的権利や個人の権利と基地被害との関係について議論を深め、整理することが課題と言えそうだ。