市民提訴方針は「スラップ訴訟」 識者や住民がみる市の対応とは…


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 【宮古島】宮古島市の不法投棄ごみ事業の訴訟を巡って、市が市民を提訴する方針が明らかになったことを受け、市民や識者からは「行政として恥ずかしい対応だ」「典型的なスラップ訴訟だ」などと批判の声が上がった。

 不法投棄ごみ訴訟は2016年1月、撤去事業後も大量のごみが残存しているにもかかわらず公金が支出されたことや、ごみ処理量が市職員に改ざんされたことを受け、市民有志6人が事業費返還を求めて起こした。那覇地裁は18年3月、事業は適法と認め市民側の請求を棄却。市民側は控訴したが、福岡高裁那覇支部は同事業の契約に問題はなかったとして同年12月に市民側の訴えを退けており、今年4月には最高裁でも市民側の上告が棄却された。

 この問題を巡っては、住民訴訟とは別に刑事訴訟もあり、昨年6月に当時の市職員に対して有罪判決が言い渡されている。

 住民訴訟を起こした原告の1人は「事業を巡っては刑事裁判で有罪判決も出ており、何らかの不正を疑って批判するのは市民として当然の権利だ」とし、「住民訴訟は自己利益のためではなく、より健全な市政運営のために取り組んだ。市のことを考えている市民に対し、今回のような態度をとる市は恥ずかしい」と語った。

 不法投棄ごみ訴訟で、住民側代理人を務めた喜多自然弁護士は「市の政策に異議を述べる住民に対し、どう喝をする目的で提起する訴訟と考えざるを得ない」と市の対応を批判。市議会には「この訴訟がどのような訴訟かを議論する必要がある」と求めた。

 東村高江のヘリパッド建設工事に反対する住民の抗議活動を、国が通行妨害だとして訴えた訴訟で住民側代理人を務めた横田達弁護士は「反対した者を狙い撃ちして、脅し目的で企てているのではないか」とし、高江の訴訟と同様の「スラップ訴訟」だと指摘する。市の対応は住民自治を後退させるとして「ひどく悪質だ。民主主義の権利を軽く見ている」と批判した。