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北朝鮮ミサイル発射 県も情報分析が必要だ<佐藤優のウチナー評論>


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 22日、韓国政府は日本と結んでいる軍事情報包括保護協定(GSOMIA)を破棄することを決め、翌23日に日本政府に通報した。北朝鮮がこの状況を注意深く観察した上で行動している。24日朝、北朝鮮は短距離弾道ミサイルを発射した。7月25日以降、短距離弾道ミサイルと見られる飛翔体を北朝鮮が発射したのは、今回で7回目だ。

 〈北朝鮮が飛翔体発射を続けるのは、開発してきた武器の性能向上を図るとともに、韓国が日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄を日本に通告したことを受け、日米韓を揺さぶり3国間の協力態勢を見極めようとするねらいがあると見られる。(中略)岩屋毅防衛相は24日午前、記者団に対し、北朝鮮の意図について「北朝鮮は地域の情勢をしっかりと見ているだろうから、間隙(かんげき)を突いたということではないか」と説明。韓国の協定破棄通告をふまえ日韓の連携に揺さぶりをかけたとの見方を示した。岩屋氏は「引き続き、日韓、日米韓の連携をとっていきたいと思っており、そういうオファーはしっかり韓国側にしたい」と述べ、今後も日韓での連携を続ける意向を示した。/防衛省は24日朝、韓国軍合同参謀本部より早く発射を公表した。7月25日以降の発射では韓国軍が先だった。岩屋氏は「万全の体制をとっており、今回は早く判断できる材料、情報がそろった」と述べた〉(24日「朝日新聞デジタル)。

 防衛省は韓国の情報に依存せずに、北朝鮮のミサイル発射に関して独自で必要な情報が入手できていることを誇示している。

 北朝鮮政府が事実上運営するウエブサイト「ネナラ」(朝鮮語で“わが国”の意味)は、今回のミサイル発射についてこう報じた。

 〈敬愛する最高指導者は、超大型ロケット砲兵器システムの開発状況を調べ、試射命令を下した。/試射を通じて超大型ロケット砲兵器システムの全ての戦術的・技術的特性が計画された指標に正確に到達したことを検証した。/敬愛する最高指導者は、本当に大した兵器だ、われわれの若い国防科学者たちが一度も見たことのない兵器システムを全く自分の頭で着想し、設計して一度に成功させたが聡明(そうめい)だ、大きなことをしたと高く評価した〉(25日「ネナラ」日本語版)。

 この発射を通じて北朝鮮は米国に到達する長距離弾道ミサイル(ICBM)は廃棄するが、韓国と日本の一部地域に到達可能な短距離弾道ミサイルは保持し続けるという意志を表明している。北朝鮮に対抗して日米韓の連携が必要なのに困った状態になった。当面は日本独自で北朝鮮情報を収集し、分析する態勢を強化することに迫られる。

 懸念されるのは、日韓関係の悪化が、沖縄における防衛力増強の口実に用いられることだ。県として、最近の日韓関係の変化が中央政府の沖縄政策にどのような影響を与える可能性があるかについて、独自の情報収集を強化し、分析するとともに、適切な対策を考えなくてはならない。

(作家・元外務省主任分析官)

(琉球新報 2019年8月31日掲載)