【記者解説】県側の実績提示必要 沖縄予算 国への要求前提に


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 沖縄関係予算の2020年度概算要求額は、3年連続で同額の3190億円に決まり、今後は年末の予算編成に焦点が移る。基地問題を巡る国と県の関係が額面に反映されやすいとして注目を集めるが、昨年から県が始めた具体的な予算規模を示しての要求には、戸惑いの声も聞こえる。

 政府の関係者は今回の要求額について「(県の要望額は)希望額を積み上げただけだ。全国の自治体が必要な額を訴えてくる中、(県の要望額は)とてもではないが確保できない」と指摘した。

 沖縄振興策は県外との格差是正を掲げる。だが、少子高齢化や過疎化が全国で急速に進む中、人口増や観光客の増加を背景に好況が続く沖縄は、相対的に「うらやましい」(他県選出の自民党議員)との評価もあり、沖縄振興へのまなざしには変化も生じている。

 それでも、戦後27年に渡る米統治下で製造業の集積が進まなかった影響はいまだ県民の暮らしに影を落とす。全国最下位の1人当たり県民所得、子どもの貧困問題など課題は山積する。

 自由度の高い一括交付金は、自治体がしっかり使うという前提で確保される。効果的に使われていない箱物に使われたり、実績報告に問題が見つかったりすれば、予算確保の前提となる信頼性を脅かす。

 一括交付金を沖縄や地域の将来に真に必要な事業に使っているのか。県や自治体にも、よりしっかりした実績の提示や沖縄の将来を見据えた企画の提案など、予算確保に向けた工夫が求められる。

 (知念征尚)