図書館が令状なく利用者情報を捜査当局に提供 プライバシー侵害の恐れ


社会
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 県内の図書館のうち、那覇市立中央図書館と名護市立中央図書館が裁判所の令状がないまま、捜査当局に利用者の情報を提供していたことが31日、分かった。刑事訴訟法で規定される「捜査関係事項照会」などの任意の捜査協力依頼に応じていた。那覇は、2018年の特定の日のある時間帯の貸出者・返却者の氏名や住所、生年月日を提供していた。2館は本の書名の提供はしていないが、捜査当局への利用情報の提供は個人のプライバシーを侵害する恐れもある。

 日本図書館協会が表明する「図書館の自由に関する宣言」では利用者の読書事実や利用事実を外部に提供する場合は、裁判所の令状が必要としている。

 那覇市立中央図書館は昨年、県警から「子どもへの付きまとい行為をしている不審者が貴館を利用している可能性がある」などとした捜査への協力依頼に応じた。当該人物は実際に出入りしていて、後日、摘発されたと連絡があった。

 大城義智館長は「基本的に令状がないと外部への情報提供は応じていないが、この場合は緊急性が高いと判断した。貸し出した本の書名は憲法の制約から令状があっても絶対に提供できない。今後も基本を堅持しつつ、慎重に判断する」と述べた。

 名護市立中央図書館には数年以上前、警察官が特定人物の図書カードを見せて今も有効かどうか照会してきた。同図書館は「既に当該人物は除籍されている」と回答した。

 一方、2館が利用するシステムでは、利用者が過去にどの本を借りたかという記録は残されない。2館とも「今現在借りている書名は記録されるが、返却した時点で記録は消える。統計上の冊数としての記録しか残らない」とした。