離島ごとに課題に違い 幅広い知識求められる「しまナース」 島民に寄り添い、やりがいも


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小浜診療所に赴任した当初の酒井知美さん(左端)=2017年4月、竹富町小浜(酒井さん提供)

 「寂しくなるね、せっかく慣れたのに」。看護師の酒井知美さん(47)は、小浜島の女性患者がぽつりと漏らした言葉が忘れられない。2017年4月に小浜診療所に着任し、2年間勤務した。離任が決まり、今年3月で島を離れると告げた時の返事だ。

 女性は島に1人暮らし。高齢になり、内服薬の管理もままならない状態だった。島外に暮らす家族はあまり頻繁には帰ってこられない。家族やヘルパー、ケアマネージャーらと何度も話し合って対応を検討した。診察回数を増やしてこまめに接するように心掛けるなど工夫した結果、状態は好転した。体調も良くなり、順調に生活を送っている。

 東京都出身の酒井さんは女性のケースを「離島診療所で丁寧に関われたからこその結果」と強調する。看護師生活のうち17年間は都内の大学病院に勤めた。11年に石垣市に移住し「患者とじっくり向き合えるようになった」という。

 小浜診療所で充実した日々を送ったが、配属されたばかりの数カ月は、何をするにも悩みが尽きなかったという。「行き詰まった時、しまナースの先輩に相談に乗ってもらえたのが大きかった」と話す。

 しまナース2年目の加島博美さんも、20年近く前に粟国診療所で勤務経験がある。粟国ではこれまでの病棟勤務との違いに困惑したと振り返る。「診療所は掃除や物品、薬品管理まで1人で何もかもやらないといけない。負担は大きかった」。1人体制の診療所看護師は横のつながりが希薄で、自分のやり方を見直す機会もなかった。しまナースは16カ所の県立離島診療所をつなぐ役割も担うようになっている。

 事業が始まった13年度から、しまナースは2人体制が続いていたが、負担軽減のため19年度からは3人に拡充された。小浜診療所を離れた酒井さんが4月から新たなしまナースとなり、石垣市に常駐している。これまでは沖縄本島から各地の離島診療所へ派遣されていたが、多良間島や西表島など宮古・八重山地方は原則として石垣市から派遣する方針だ。

 今年5月には、しまナースとしての初業務で波照間島を訪問した酒井さん。「高齢者への薬の渡し方への配慮など、小浜診療所とは違う工夫があった」。離島によって抱える課題も違い、幅広い知識が求められると痛感している。「こんな貴重な経験をさせてもらえてラッキーだと思う。業務応援だけではなく、業務改善も提案できるよう、もっと勉強したい」と声を弾ませた。やりがいをかみしめ、さらなる向上を図る。
 (前森智香子)