【記者解説】普天間期限、振り出しに 国と沖縄側を隔てるものは…


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 米軍普天間飛行場の運用停止を巡って政府が「5年以内」に代わる新たな目標期限の設定について「難しい」との見解を示したことで、沖縄県名護市辺野古への移設を前提とする政府と、一日も早い運用停止を望む地元の県・宜野湾市との隔たりが浮き彫りとなった。運用停止は政府にとって県内移設容認を迫る「材料」だが、地元にとっては切実な願いだ。

 政府と県、市は今年4月の負担軽減推進会議で新たな期限設定を目指し、作業部会で議論する方向で一致したばかりだ。いったん前進したかに見えたが、今回の作業部会では振り出しに戻った印象が強い。開催が不定期で間隔が空いたことから「今までの取り組みの確認になった」(和田敬悟宜野湾市副市長)面も否めない。ただ、最大の問題は三者による認識の食い違いだ。「5年以内の運用停止」は2013年12月、当時の仲井真弘多知事が要請し、安倍晋三首相が応じた。当初から県の意向は辺野古移設の進展とは切り離して運用停止を実現することで一貫している。だが、新基地反対を掲げる翁長県政以降、政府は態度を一変させた。辺野古移設と関連させ「県の協力を得られていない」とし、実現は困難だと主張するようになり、今年2月に期限を迎えた。

 政府は新たな期限設定についても辺野古移設を前提に困難視する。移設ありきなら、県の試算で13年以上かかる新基地建設を待たねばならないことになる。政府が姿勢を変えない限り、「5年以内の運用停止」と同じ失敗を繰り返すだけだ。その政府の姿勢が、安全な暮らしを望む市民・県民の願いを放置することにつながっている。
 (明真南斗)