米軍北部訓練場近くの提供区域外に普天間飛行場所属ヘリコプターが誤着陸した事案の背景に、訓練場の部分返還が沖縄の負担軽減に直結していないという問題がある。日米両政府は2016年12月に北部訓練場の「過半」の返還が実現したとして、大々的に返還式典を開き、沖縄の基地負担軽減として強調した。実際は土地が返還されても訓練空域は維持され、米軍が自由に訓練できる状態が保たれている。
政府としては基地負担軽減の具体的な「成果」として訓練場の部分返還を位置付け、普天間飛行場の名護市辺野古移設などその他の計画にも理解を得たい考えだ。しかし今回、実質的な負担軽減になっていないことが改めて露呈した。
米軍の対応が鈍いという問題もある。誤着陸は4日午後3時ごろだが、米軍の説明が沖縄防衛局を通じて県に伝わったのは5日夕になってからだった。8月末に大型ヘリの窓を落下させた際、地元や日本政府が米軍に迅速な通報を求めたばかりだ。1987年に与那城村(現うるま市)の公園に米軍ヘリが不時着した際は米軍司令官が村役場へ出向き、陳謝している。最近では不時着や部品落下の発生時、自ら出向くどころか、県からの呼び出しを拒むことが多い。
発端は単なる確認ミスだとみられるが、負担軽減が実現していない現状や米軍の運用優先など、基地問題に通底する問題が浮き彫りになった。日米両政府には今回の事案を軽視することなく、実質的な負担軽減を図る取り組みが求められる。
(明真南斗)