「被害に差、おかしい」 爆音に静な生活奪われる 座喜味以北に住む男性 数値だけでは計れない被害


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「第2次訴訟で座喜味以北に住む原告は20人余りだったが、第3次では200人以上に増えた。多くが騒音被害を我慢していたことの表れだ」と話す浜川秀樹さん=6日、読谷村座喜味

 「人が決めた境界線1本で、爆音被害に差をつけるのはおかしい」。第3次嘉手納爆音訴訟の原告の1人、読谷村瀬名波に住む浜川秀樹さん(53)=村職員=は憤りを隠せない。第1次訴訟から求め続けている村座喜味以北の被害認定。第3次訴訟の一審で初めて「座喜味以北地域」に居住する原告の損害賠償請求が認められたが、「控訴審で覆えされる可能性もある。ぬか喜びはできない」と話す。

 村瀬名波や長浜など、座喜味以北に住む原告の被害が認められるかは、今訴訟の争点の一つだ。「嘉手納基地から派生する爆音がいかに広域の住民を苦しめているか。それを証明してもらいたい」。原告の共通の願いは、補償より静かな生活だと訴える。

 浜川さんは沖縄市生まれで、幼少期を読谷村波平で過ごした。結婚、育児を機に嘉手納町水釜、村伊良皆を経て現在は瀬名波に一軒家を構える。「本島中部で生活する限り、基地被害から逃れられない」。基地と隣り合わせの日常は爆音へのいら立ちと、いつ起こるか分からない米軍機墜落への恐怖に満ちている。

 第2次訴訟の最高裁判決では、沖縄防衛局が村座喜味に設置した航空機騒音測定器の騒音指数を根拠に原告の請求を退けた。だが、「そもそも防衛局設置の騒音測定器は旋回ルートから外れている」と指摘する。

 空中給油機やヘリコプター、対潜哨戒機…。自宅や職場の村役場周辺の上空をほぼ毎日、昼夜を問わず飛び交う米軍機。のどかな村に米軍機の旋回音は不気味に響く。

 夜間の騒音は一日の疲れを癒やす時間も奪う。一家団らんのひとときや読書の時間―。睡眠への影響も含め、恒常的な騒音が心身のストレスになっている。

 公務員という立場上、訴訟に参加することに不安と迷いもあったが、村民の生活環境を良くしたいという思いが勝った。米軍基地に対する考え方は人それぞれだが、一日の終わりを穏やかに過ごしたいという思いは皆一緒だと感じている。

 「国を相手に勝てるはずがない」と権力の前に沈黙を守る人たちもいる。だが、騒音が“埋もれた公害”にならないように「夜間の飛行停止を勝ち取るまで声を上げ続ける」という覚悟を決めた。

 「騒音指数だけで被害実態は計れない」。今度こそ住民の思いに寄り添った判決に期待したい、と力を込めた。
 (当銘千絵)