在沖海兵隊移転先のグアムで起きていることは… 知事、議会、住民から工事停止の要求相次ぐ


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 在沖米海兵隊の移転先グアムで、実弾射撃場の建設予定地から考古遺物が相次いで発見されている。グアムで最後の一本となる絶滅危惧種の成木も自生しており、工事中止を求める住民と、工事を進めたい軍が対立している。

■五つの射撃場

 地元紙パシフィック・デーリー・ニュースによると、米軍基地内で昨年12月から陶器や乳鉢など13の考古遺物が見つかった。発見場所の多くはアンダーセン空軍基地北西部。五つの実弾射撃場の建設予定地を抱え、その一つに絶滅危惧種の木が生育している。種をつける木としてはグアムで唯一とされる。

 6月、20の住民団体や経済団体が「単に陶器が発見されたという話ではない。歴史の証明であり我々の存在の証明でもある」と、レオンゲレロ知事に射撃場全体の工事中止を求める要望書を出した。議会も15人中13人が同様の決議案を提出した。世論の高まりを受け知事は軍に「木の調査がまとまる12月まで、木周辺の工事を停止してほしい」と期間と工事場所を限定した要請書を送った。

■新たな悪影響

 「歴史的な場所を壊してしまうのではないか」「島の資源を守るために別の道を模索すべきだ」

 7月3日の議会公聴会。地元紙によると、射撃場全体の工事を停止すべきだとの証言が圧倒的多数だった。

 軍の司令官はその場に出席せず、書面で「法に従い適切な対策を取っている」と知事要望を拒否した。

 発見物があれば工事を中断して別の場所に移しており、木と工事現場の間には緩衝地帯を設けていると主張した。

 議論は平行線のまま、8月下旬にはパブリックコメントが始まった。その中で軍は、射撃場とは別に、都市型戦闘訓練施設の工事が現地の考古遺物に悪影響を及ぼす可能性を明らかにした。

 8月29日に玉城デニー知事はグアムを訪問し、アンダーセン基地などを視察した。その際米軍から、建設計画は順調に進んでいるとの説明を受けた。

 住民の懸念が払拭(ふっしょく)されないまま工事が続行すれば、反発は必至だ。米軍施設の建設工事を巡り、米軍と住民の溝はますます深まっている。 (与那嶺路代本紙嘱託記者)