命の灯守って50年 八重山病院 伊原間診療所を廃止 診療所や医師に感謝


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花束を受け取り笑顔を見せる今村昌幹医師(左から5人目)や診療所スタッフ、地域住民ら=11日、石垣市伊原間

 【石垣】沖縄県立八重山病院が石垣島北部の住民を対象に伊原間診療所で実施してきた巡回診療が11日、終了した。診療所は廃止となる。長年診療所を利用してきた住民らは現在地で約50年間患者を診てきた診療所の廃止を惜しみつつ、通算で約20年にわたって巡回診療を担当した八重山病院の今村昌幹医師(67)に花束を手渡し、診療所や今村医師への感謝を口にした。

 一方で住民からは、今後は遠く離れた市街地の医療機関に通院せざるを得なくなることに不安の声が漏れ、島北部で医療を受けられる体制整備を行政に求める声が相次いだ。

 伊原間診療所は1961年に設置され、70年に現在地に建物が新築された。患者数の減少などにより巡回診療終了が決まった。今年4月からは月1回、今村医師が八重山病院から診療所を訪れて北部地区住民を診察していた。

 最後の診療日となった11日には9人の患者が利用した。多くの患者は今後、八重山病院で今村医師が引き続き担当するが、一部は市街地にある別の医療機関での診察となる。

 別の医院への紹介状を渡された仲宗根静江さん(75)=明石地区=は「(今村医師は)義父母の往診までしてくれて、おかげで在宅でみとることができた。頭が下がる思いで、お別れするのがさみしい」と声を落とした。

 子どもが幼少時から利用していると話し、「免許もなく、バスの本数も少なかったので近くにあって助かった。診療所がなくなるのは命の灯が消えるような思いだ。せめて月一回でもいいから開いてほしい」と求めた。

 今村医師は「人口が減るなどしていつまで続くか分からず、勢いでやってきた面もあるが、みんなに会うのが楽しみだった。感謝したい」と笑顔を見せた。