3者連携で授業深化 プログラミング教育 浦添市制度 協力員、支援員 教員へ改善策、機器支援も


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 新学習指導要領の一つである「プログラミング教育」の必修化が、来年度から小学校を皮切りに実施される。実施が近づくにつれて教員の間で指導方法や内容について不安の声も広がる。そんな中、情報教育で先駆的な取り組みをする浦添市教育委員会が2017年度から始めた「浦添市教育情報化推進計画」の一部に、県内唯一の「ICT(情報通信技術)エバンジェリスト」制度がある。“伝道師”を意味するエバンジェリストはプログラミング教育をリードする存在で、市内の小中学校での情報教育に一役買っている。

 同市のプログラミング教育体制はエバンジェリスト、研究協力員、ICT支援員によって成り立っている。エバンジェリストは校長の推薦を受けた教員で、市内の全小中学校に配置されており、主な役割はプログラミング教育のモデルとなる公開授業の展開だ。そして協力員が公開授業を研究・評価し、改善点などをエバンジェリストにフィードバックすることで、新たな授業案につなげる。

 また情報教育の授業で必須なのがICT機器だが、故障などのトラブルも多いという。多くの教員が頭を抱え、専門的な知識も必要となる機器の使用や修繕サポートで活躍するのが支援員だ。

 このように3者が最適な役割を担いながら連携することで、プログラミングの授業内容を深める。教員の負担や苦手意識の解消にもつながったという。

 プログラミング教育の目標は情報活用能力の習得だけではなく、論理的で主体的な思考を身に付けること、とされており「さまざまな課題を分析して、修正する方法を自ら考える力」の育成とも言える。

 実際のプログラミングソフトでは、キャラクターの行動を一つ一つの動作に細分化したものを組み立て、見つかったバグを修正しながら試行錯誤する。この過程が論理的思考であり、日常生活の多くの行動で応用が可能だ。最近ではこの考えを身近な例に当てはめ、ICT機器の操作やインターネット環境がなくても、子どもたちがプログラミング教育の論理的思考を学べる「アンプラグド」の授業も出てきた。

 実際に市内の小学校では、エバンジェリストの教員が体育の逆上がりに「アンプラグド」のプログラミングを取り入れた。タブレットで体の動きを客観的に見直し、逆上がりの動きを細かい動作に分けて考える。腕や足の位置で「なぜできないのか」を分析して直すことで成功を目指す内容だ。

 浦添市立教育研究所の井﨑重指導主事は、AIなどが発達した社会で淘汰(とうた)されないためには「習慣化された物事を見直し、主体的に考えて新しい発見につなげる力が重要になる」と、プログラミング教育の意義を語った。
 (下地陽南乃)