10代が演じる虐待、貧困の現実 「花の名前」上演 「本当の優しさ」問う


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母親の幻(登川瞳美)に暴力を振るわれるシーンでおびえる表情を見せる山本花役の垣花胡心=1日、那覇市のアトリエ銘苅ベース

 極限の貧困状態の中でも必死に生きようとする少女と、少女に手を差し伸べる人々の姿を描いた演劇「花の名前」(出口裕子演出)が1日、那覇市のアトリエ銘苅ベースで上演された。虐待や貧困などの問題を、10代の子どもたちが中心となり演じ「本当の優しさ」を観客に問い掛けた。

 物語は、15歳の少女・山本花(垣花胡心)の「私はお母さんを殺しました」という告白から始まる。花は無戸籍の妹と弟と食事もままならない生活を送り、学校にも行けない。花は働きに出たきり帰ってこない母親(登川瞳美)の幻を見るようになる。生きる力をそがれた母親の幻は花の前に度々現れ暴力を振るった。花は妹と弟を必死に守ってきたが限界を感じ、酒に酔った母の首に手を掛ける。

 登川は娘の髪をつかみ体をたたくなどすごみのある演技を見せた。垣花も身を固くしたり声を震わせたりと役の状況や心情を落とし込んだ演技で観客の心を揺さぶった。

 花の生活状況を察した人たちはあらゆる救いの手を差し伸べる。体を売らずにお金を得る方法として「パパ活」を紹介した島内夏未(外間里菜)が「(人には事情があるのに)『自分の体を大事に』とか『将来のこと考えて』とか無責任に言えなくないですか。マジに追い込まれてる人にとってはそういうきれいごとが一番しんどいんじゃないかな」と淡々と話す姿が印象的だった。児童相談所に通報した上原悠里(上原万衣乃)は涙を目に浮かべ感情を出しながら、自分の行動が正しかったのか振り返った。対照的な表現は「あなたならどうしますか」と問い掛けているようだった。