【記者解説】知事・沖縄相初会談から見えること


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 就任から2日という早い時期に来県し、玉城デニー知事と会談した衛藤晟一沖縄担当相は、沖縄戦の犠牲者を悼み、沖縄振興への決意を示したものの、辺野古新基地建設を巡っては、玉城知事の要請とかみ合わず両者の隔たりが改めて浮き彫りになった格好だ。

 衛藤氏は基地負担軽減について「内閣の方針に沿って頑張らないといけない。いろんな意味で『本音』の話も聞かせてもらいたい」と述べるなど、辺野古新基地に反対する県を、振興という「アメ」で手なずけ、思い通りに従わせたいという思惑も透ける。

 衛藤氏は政府と県の関係を「感情のもつれ」と表現したことについて、12日の記者会見では「せっかくみんな基地負担の軽減という方向を向いているのに歯車がかみ合わない」と述べた。13日にはこの点について「歯車ががちっと組み合うように、そのつなぎの役をしなければならない」と強調した。

 新内閣の顔ぶれは辺野古移設を強行する強い意思がうかがえる布陣に映る。内閣の方針に沿って頑張るという衛藤氏が政府と県の溝を埋め、問題解決への糸口を作れるかは不透明だ。

 琉球大の島袋純教授(政治学)は「基地問題は人権問題であり、どれだけ振興でお金をつぎ込んでも解決できない」と指摘する。新基地建設に何度反対の民意を示しても強行している政府に対し、県民の多くは、憲法で保障された人権などが県民に適用されているのかと疑問を口にする。

 悲惨な沖縄戦と米施政権下で命が軽んじられる苦難を経験した県民の望んだ沖縄経済開発の出発点は、基地経済脱却と平和経済に基づく開発、すなわち基地のない平和な沖縄を目指すことだ。「沖縄の歴史を学びたい」という衛藤氏がどう県民の苦難の歴史と訴えに向き合っていくのか注目される。
 (中村万里子)