育てラガーマン 沖縄から日本一目指す 小中高つなぐプレー環境整備 デイゴラグビースクール


社会
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銘苅信吾さん

 沖縄ラグビー界を変えようと奮闘しているラグビースクールが名護市にある。小中学生を対象にした「デイゴラグビースクール」だ。中学卒業後はスクールと協力する強豪の名護高に進学することで小学生から高校3年までの12年間を通してプレーできる環境を整えた。小中から一貫し、高校へとつなげるシステムは全国でも他に例がないという。トップリーグで活躍する県勢も生まれているが、県内の競技レベルはいまだ高いとは言えず、花園の通称で呼ばれる全国高校大会は16強が最高位。競技人口が伸び悩む逆境にあるが「日本一」を目指し、ボールを追いかける。

論理的な指導

練習試合 本番さながらの真剣なプレーで汗を流すデイゴラグビースクールの子どもたち=名護21世紀の森ラグビー場(喜屋武研伍撮影)

 デイゴラグビースクールは名護高、国際武道大でプレーした名護市出身の銘苅信吾代表(32)が昨年立ち上げた。

 銘苅代表は埼玉のワセダクラブのコーチ、関東大学対抗戦の早稲田大でヘッドコーチの経験がある。指導者として初めて向き合ったのはワセダクラブの小学1年生。子どもたちに寄り添いながら指導を続け、6年生に上がる頃には全国で戦える選手になっていた。

 全国大会では選手同士でアドバイスや意見交換をし合い、ささいな変化にも気付けるように成長し、チームは全国3位をつかみ取った。その経験から「一貫した指導なら、沖縄でも日本一を取れる」と確信した。

 昨年4月にスクールを立ち上げた。名護高ラグビー部で外部コーチもしながら、約60人の小中学生たちの指導に当たっている。「怒るのは指導者の力不足」ときっぱり。選手たちのミスにも、一切声を荒らげず、論理的な指導を心掛けている。「情熱」「愛情」「向上心」を指導の軸に掲げる。進化し続ける戦術の潮流や技術の研究を怠らない。

デイゴラグビースクールの選手、関係者ら

 練習ではわざとミスをさせ、選手間だけでの問題解決を促す。人任せではなく、選手自身が問題と向き合うことで、考える力を養う狙いがある。「一人一人がリーダーになれる」ラグビーを目指している。

今しかできないこと

 銘苅さんが一貫した指導にこだわるのには他にも理由があった。中学3年の夏に競技を始め、高校の3年間は競技に一心不乱に打ち込んだ。最終学年には主将を任され、花園出場を果たした。しかし、部活のことだけを考えた日々はあっという間で「3年間に詰め込んでしまうと、燃え尽きてしまう」という。高校で完全燃焼し、引退する人も少なくなかった。

 現在は長期計画を持って、逆算してメニューを組み立てる。小中と発達の段階に合わせたきめ細かい指導が可能になるという。「恋愛や友人との遊びなど、ラグビー以外にも今しかできないことをしてほしい」とも願う。

 スクール名のデイゴには「子どもたちの未来の可能性を広げる大きな根を張り、あきらめずに前を向き、すてきな花を咲かせてほしい」という願いが込められている。スクールに通う比嘉礼主将(名護中3年)は「トライを決めると気持ち良い。もっと上にいきたい」、弟の志道(名護小3年)は「スクールは楽しい。(将来は)トップリーグの選手になりたい」と力を込めた。この中から、日本を代表するラガーマンが誕生するかもしれない。
 (喜屋武研伍)