日常の備え訴え奔走する元消防士の川満陽一さん 災害時の救助活動に必要なことは…


社会
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川満 陽一さん

 まだ多くの人の脳裏に焼き付いている、東日本大震災の記憶。沖縄でも今後、巨大地震や津波の発生の可能性があるとされている。地震・津波のみならず、全国的に自然災害は多発しており、いつ、どこで発生してもおかしくない状況だ。2018年に石垣市消防本部を退職し、民間の立場から地域住民の防災意識の向上を図るため、防災講習会や防災イベントを開催する川満陽一さん(53)は、「事前の準備が全てだ」と普段からの備えの必要性を強調する。

 ―取り組みのきっかけは。

 「2004年に発生したスマトラ沖地震の動画を10年に見た時に、防災について何も取り組んでいなかったと気づいた。そして11年には東日本大震災が発生し、事前の対策・備えの必要性を痛感した」

 「消防にいる時から非番時に講習会などを開催していた。ただ公的機関にいると時間的な問題もあったので、広く普及していきたいとの思いから民間の立場で取り組んでいる」

 「災害時の消防・救助活動などを円滑にするのは住民の防災力だ。特に陸路がない島では、備えが必要だ。家族と情報共有しておくことも重要だ」

 ―取り組み内容は。

 「災害への備えを始めるきっかけとして防災バッグに何を入れたら良いかということを話したり、学校で応急手当て講習を開いたりするなどしている」

 「年に1回はイベントを開くようにしている。災害時にはアウトドアの知識・技術が有効に生かせるので、今年は防災キャンプを開催して、楽しく理解できるようにした」

 ―手応えは。

 「口コミで講習会の依頼が増えてきた。どのような取り組みをして良いか分からないという人も多いと思うが、どう取り組んだり工夫したりすれば良いか気づいてもらえることも多い」

 「自主防災会の組織運営など不十分なところはあるが、地域の防災意識は上がってきていると思う。消防の後輩たちも関心を高く持ってくれて、協力してくれる」

 ―今後は。

 「各自治会と連携して、防災対策を展開したい。防災は総力戦なので、全県的に同じ気持ちの人たちと連携して普及していければ。早い段階で防災の必要性に触れてもらうために、児童生徒に講習会をできる機会を増やせればとの思いもある。気軽に講習会を依頼してほしい」

 (聞き手・大嶺雅俊)

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 かわみつ・よういち 1966年、石垣市桃里出身。92年に市消防に入庁。2018年3月に退職後、ロードバイクレンタルなどを手掛けるポタリングおきなわを開業した。防災士、救急救命士、看護師の資格を持つ。小児科医の妻・桐子さん(40)と共に、防災意識向上に向けた取り組みをしている。