工事作業員の服を身に着け「借金なBABY」と歌い叫ぶのはコミカルな5人組バンド・人力マナティ。メンバーはボーカルのノリタカマン、ギターのshinとLecter Ogi.、ベースのファンタスティック谷川、ドラムの東郷ちえみ5級で、31歳のちえみ以外は全員40代半ば。サラリーマン世代が作る生活感漂う生々しい曲は、多くの人の共感を呼ぶ。
人力マナティが始動したのは2004年。オリジナルバンドを組もうと音楽仲間や職場の同僚など、ひょんなつながりからメンバーが集まった。ちえみの夫が経営していたレンタルスタジオで練習していたのが縁で、17年にちえみも加入。結成後13年間は結婚や子育ての時期と重なり活動は控えめだったが、現在は月に1回、中部を中心に県内各地でライブを行っている。互いに主張しすぎない程よい距離感はもちろん、バンド内に産休や育休、“有休”があるのも長く続く秘けつだ。
生活感を表現することにこだわり“働く人”を想像させる衣装を作業服専門店でそろえた。歌詞は職場の熱帯魚ブームや実在したストーカーのような女など、メンバーの身近にあったネタが基になる。shinは「ほとんどが実話だ。愛だの恋だのそういうのよりも、仕事や家庭など生活の中で生まれた思いを書く」と話す。
沖縄市で毎年開催しているピースフルラブ・ロックフェスティバルの出演が懸かる審査に去年と今年参加し、決勝まで進んだ。惜しくもフェス出場とはならなかったが、キャッチーなフレーズと人間らしさがにじみ出る歌詞、ボーカル・ノリタカマンのユニークなパフォーマンスは観客の心をつかんだ。
今後について「バンドの個性は表現できてきた。次はおとなしいメンバーの個性も出していきたい」と語るファンタスティック谷川。バンドのカラーは既にでている印象だが、個々が輝く人力マナティはさらに魅力を増すだろう。
(関口琴乃)