即日結審も沖縄県が見据える長期戦とは… 辺野古関与取り消し訴訟


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 名護市辺野古の新基地建設を巡り県が国を相手に提起した訴訟は、18日の第1回口頭弁論で即日結審し、10月23日に判決が言い渡されることとなった。政府機関である沖縄防衛局が私人を装い、国民救済を目的とする行政不服審査法を利用したことの適法性などが正面から問われる。玉城デニー知事は「必要な主張や立証はしっかり行えた」と強調。並行して県が提起している抗告訴訟と合わせ、政府の対応の違法性を訴える構えを見せた。一方、政府側は勝訴という「想定内」(政府関係者)の流れを念頭に、県への計画変更申請に向け粛々と準備を進める。

集会を終え、口頭弁論の意見陳述のため裁判所に向かう玉城デニー県知事(中央)ら=18日午後1時55分、那覇市楚辺の城岳公園(又吉康秀撮影)

 18日の第1回口頭弁論では、玉城知事の意見陳述後、県の代理人弁護士が証人尋問を要求した。これに対し、政府側の代理人は淡々と県の主張を否認した上で「審議を終結し、却下するよう申し上げる」と求めた。大久保正道裁判長は県の証人に関する求めを退け、弁論を終結させた。

■悲観せず

 即日結審について、県の弁護団は弁論後、地方自治法に基づく裁判である性質に照らせば「想定されている類型で、十分あり得る話だ」「悲観的な話では全くない」と振り返った。辺野古を巡る過去の裁判では、短期結審が県敗訴につながったことがあったが、県幹部も「証人が認められなかったことは残念だが、事前に弁護団から即日結審はあり得ると聞いていた」と語った。

 一方の政府側は、埋め立て承認撤回を取り消した国土交通相の「裁決」は地方自治法上の「国の関与」に当たらず、県の訴えがそもそも訴訟対象にならないとの論陣を張っている。これまで総務省の第三者機関「国地方係争処理委員会」が政府側の主張を追認する判断を示したこともあり、政府関係者は即日結審について「これまでの流れで論点は出尽くしている」と自信をのぞかせた。

■長期戦

 司法の場に移された対立をよそに、防衛省は今月設置した有識者会議で軟弱地盤改良に関する検討を進めており、まとまり次第県に計画変更を申請する。防衛省関係者は今後下される司法判断について「変更申請の正当性を補強する材料にもちろんなる」と語る。

 設計変更申請に関する県と政府側との協議は現時点で行われていない。県関係者は「係争中の申請も考えられるが、仮定の話でどうなるかは分からない」と述べるにとどめた。

 県は裁判と並行し、引き続き政府に対話による解決を求める構えだ。別の県幹部は、県が提起している今回の関与取り消し訴訟と、もう一つの抗告訴訟について「関与取り消し訴訟は入り口が広く、深さはない。抗告訴訟は入り口が狭いが、深さがある。二つの裁判で県の主張を訴えていく」と解説し、長期戦を見据えた。

(當山幸都、当間詩朗、吉田早希)