民間英語試験導入、受験生に不安募る 大学入試 離島は選択肢狭まる恐れも 大学側の対応もさまざま


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 現在の高校2年生から受けることになる新大学入試で導入される英語の民間試験に対する高校や生徒の不安が募っている。6団体7種の民間試験の中には沖縄開催が未定のものもあり、県内の受験生は選択肢が狭まる恐れもある。離島はさらに経済的負担が増す可能性が高い。大学側の活用状況もさまざまで、同じ大学でも学部・学科や選抜方法によって活用方法が異なることも。高校や受験生が「公正・公平な試験にならないかもしれない」という不安を抱えたまま、試験を受けるための共通ID発行申し込みが11月に始まる。

延期要望

 「一貫して求めていたのは公正・公平であること。それが満たされていない」

 全国高等学校長協会(全高長)は10日、英語の民間試験の延期および制度の見直しを求め、文部科学相に異例の要望書を提出した。沖縄から議論に参加した県高等学校長協会の小成善保会長(首里高校校長)は、試験開始の7カ月前にもかかわらず、依然として試験日や試験会場が未定のままであることを指摘し、全高長の要望は当然の帰結と説明する。

 民間試験7種のうち、学校現場ではこれまでの利用者が多い日本英語検定協会の「英検」とベネッセコーポレーションの「GTEC」に受験者が集中すると予測されている。英検の試験会場は那覇、名護、石垣、宮古島の4市、GTECも県内開催を予定しているが、その他の試験の中には東京や大阪、福岡などの大都市しか予定していないものもある。

 また、県内開催でも先行予約に間に合わなかった場合は受験できない懸念もある。離島の受験生はこれまで1回で済んでいた島外渡航回数が増えるが、費用負担を軽減する措置も条件が限定されている。小成氏は「受験者が希望する日に希望する試験を希望する場所で受けられるのが条件だ。条件は整っていない」と苦言を呈す。

対応ばらばら

 文科省が開設したポータルサイトの情報によると、琉球大学は医学部医学科の一般選抜と教育学部学校教育教員養成課程小学校教育コース学校教育専攻の総合型選抜で、語学力の国際標準規格「CEFR」換算でA2以上(英検準2級相当)を出願資格とし、その他の学部・学科はセンターの試験成績に加点する形式だ。学校推薦型選抜では「未定」も目立つ。

 県立看護大は「出願資格」、県立芸術大は「加点方式」、名桜大と沖縄キリスト教学院大は「利用しない」、沖縄大は利用するが利用方法は未定、沖縄国際大学は7種のうち英検とGTECのみを利用し、成績の良いスコアを採用する方式だ。県内だけでも対応がばらばらで、県外の大学を目指す受験生にとっては情報収集するのも骨の折れる作業だ。

 学校関係者は「生徒から相談されても、何の試験をいつ受けたらいいのかアドバイスできない」と困惑した。(稲福政俊)