【識者評論】ホテル開発過熱 実際の取引価格はさらに高い 知念聡・県宅地建物取引業協会長


社会
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知念 聡(県宅地建物取引業協会会長)

 観光の活性化でホテル建設が増え、観光客を当て込んだ商業施設の建設が増え、商業地の価格が上がる。観光の側面でリゾート性のある沖縄の環境などに引かれた移住者が増加して住宅需要が増し、マンション、アパートの建設が増え、住宅地の価格が上がるというような構造だ。

 県内ではこれまでホテル事業に参画していなかった企業が建設に乗り出す事例もある。そこに資金力のある不動産会社、大手ホテル業者が入り乱れて開発を進めることで、地価の上昇が顕著になっている。実際の取引価格は県の発表以上に高い所は多い。これだけ地価が上がり、建築単価も高騰している中でまだまだホテル建設が続いているのは、県経済の好調さが当面続くという企業側の期待の高さが表れている。

 土地価格の上昇は良い面と悪い面がある。資産となる土地を持っている企業からすると、土地価格が向上すれば担保価値が高まり、資金調達が容易になる。賃貸物件を持っていれば、借りたい人が多いほど高い価格で貸すことができる。

 資産がない企業だと事務所の建設、賃貸にかかる経費が増し、経営が厳しくなる可能性もあるだろう。IT関連など収益性の高い事業を実施している企業は収益をさらに高め、収益性が乏しい企業は経費負担で厳しさが増すという二極化も進むかもしれない。

 土地価格の上昇と比例して県民所得が増加すれば問題ないが、そうはなっていない。ここまで土地価格、建築単価が上がってくると、住宅購入も簡単ではない。築数十年の古くて低価格帯のアパートが満室という事例もざらにある。

 いつまで土地価格が上がるかは不動産業者の間でも常に話題になる。東京五輪が終われば下がるという話もささやかれたが、国も景気の腰折れを防ぐために対策を取るだろうし金利の低水準も考えればしばらく上昇が続くだろう。