IT司令塔、任期途中での解任劇 常勤巡り対立、ISCOで起こっていることは…


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 沖縄ITイノベーション戦略センター(ISCO)の理事長を務めていた中島洋氏(72)が、18日に開かれた臨時理事会で任期途中に解職された。民間の力を生かしたイノベーションを掲げて「公募」で理事長を決めてわずか1年あまりの解職に、業界関係者からは、沖縄IT産業の「司令塔」の在り方を問う声も上がっている。

報酬と出勤日数

 解職の発端となったのは、非常勤の理事長だった中島氏が常勤化を求めたことだ。理事長職は非常勤で年間100日勤務、報酬は1日4万7千円で上限470万円という条件だった。

 ISCO側は、勤務形態や報酬の変更には本来ならば理事会を通して評議会の承認を得る必要があると指摘。しかし中島氏が、常務兼事務局長の盛田光尚氏を中心とした事務方に常勤化とそれに伴う報酬の増額を要求したため事務方の「業務に支障を来した」としている。

 一方で中島氏は、ISCOの受注事業の8割以上を占める県との契約について「県が委託する事業を全て受託できる前提で事業見込みが作られていて、非常にリスキーだと感じた」と振り返る。報酬の増額ではなく、契約内容などをしっかりと確認するためには年に100日の出勤では足りないとして常勤化を求めたが、断られたという。

 中島氏は「自立した組織になるために県の関与を極力少なくして自主事業で収益を上げようとしていたが、このままでは後退して県の下請け機関になってしまわないか」と懸念した。 ISCOの会員となる企業の関係者は、解職劇の詳細は分からないとした上で「ISCOの指摘が正しいとしても、公募で決めた理事長の職を任期途中で解くほどのことなのか」と首をひねった。

 翁長県政時代に、沖縄の情報通信産業の国際競争力を高め、産学官で長期的な戦略を構築する「沖縄IT産業戦略センター」の設置構想が打ち出される。その後現在の名称となり、18年5月に県が約40%、残りを県内IT企業などが拠出する官民一体の組織として設立した。

設立時の理念

 ISCOは設立時の理念として、先進的なITを活用して県内産業の課題解決と新たな価値創造の実現を掲げていた。トップの理事長と、実務を担う常勤の専務理事を民間から登用するとして公募を実施した。

 理事長職の募集要項には、最新のITイノベーション(革新)動向に精通していることや国内外の大学、研究機関とネットワークを有することなどが必要な能力として記されている。

 県内IT業界の関係者は「当初業界ではISCOを株式会社でという話もあった。先進的なITを活用したイノベーションや県内産業の課題解決という設立時の方向性が見えなくなっている気がする」と、組織発足後の存在感の薄さを懸念する。理事長職の日数制限について「100日では週に2日程度しか働けず、事務的な部分だけで終わってしまうのではないか。これでは優秀な人が来ても変わらない」と指摘した。

(沖田有吾、外間愛也)