AI用い乳がん遺伝子分類  琉大大学院生・藤澤孝太さん、生命医薬情報学連合大会優秀賞


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共同で研究した(左から)宮田龍太助教、藤澤孝太さん、池松真也教授

 琉球大学大学院理工学研究科1年の藤澤孝太さん(23)が、9~11日に東京工業大学で開催された「日本バイオインフォマティクス2019年年会第8回生命医薬情報学連合大会」で優秀賞に輝いた。

 藤澤さんが発表した研究は、AI(人工知能)分析と生物学的知見を組み合わせて乳がんに関連すると考えられていた遺伝子を絞り込み、「がん患者共通」と「患者個別」に分類する手法。この手法で分類された個人差の出る遺伝子が、一人一人の体質にとって最も効果的な投薬や治療法を提案できる「オーダーメイド医療」実現の後押しになるとして高い評価を受けた。

 藤澤さんの研究は、まずAIのシステム「PCAUFE」を用いて、約7千個あると考えられていた乳がんを発現する遺伝子の候補を68個まで絞り込んだ。この結果に生物学的知見を重ねることで68個の遺伝子をさらに分類し、がん患者に共通する遺伝子26個と、患者の体質差で現れる42個に絞り込むことに成功した。

 研究が進み、この個人差が現れる42個の遺伝子をより精密に特定できれば、患者個人の体質に合わせて最も効果を発揮する薬品や治療法を提供できるようになる可能性を秘める。

 最近ではばく大な費用と時間を要する薬品開発でも、病気に関連する遺伝子の特定が創薬の効率化につながるとして製薬会社が熱い視線を注ぐ。

 藤澤さんは「専門的で難しいところも多かっただけに努力が報われてうれしい」と笑顔で話した。共同で研究し、AIシステムの分析指導を担った琉球大学工学部の宮田龍太助教と、生物学分野を指導した沖縄高専生物資源工学科の池松真也教授らも入賞を喜んだ。 (下地陽南乃)