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「島を金もうけの道具に使ってほしくない」 人口360人に観光客年間50万人の竹富島で起きていることは… 開発対住民(中) 〈熱島・沖縄経済 第2部〉8


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
伝統的な景観が守られてきた竹富島の集落=8月30日、竹富島

 石垣島からフェリーで約10分、白砂の道にブーゲンビリアが咲き乱れる隆起サンゴ礁の島、竹富島。赤瓦屋根の家々やサンゴの石垣など集落には昔ながらの沖縄の風景が残り、観光客は信号機のない島を水牛車で巡る。人口約360人、周囲約9キロの島に、年間約50万人もの人が訪れる。

 島の観光名所でもあるコンドイビーチ近くで計画されるリゾートホテル開発の話が住民の耳に入ったのは2014年だった。約2万平方メートルの敷地に、島の伝統集落を意識した赤瓦木造平屋の宿泊施設を整備する「竹富島コンドイビーチリゾート事業計画」だ。

 事業者のRJエステート(那覇市)は住民向けの説明会を開いたものの、住民の理解を得るのは厳しかった。竹富公民館の総会で建設反対の方針が決議され、「竹富島を守る会」による署名活動も起きた。

 前竹富公民館館長の上勢頭篤さんは「もう島は開発したくない」と強調する。

 住民がホテル建設に反対する理由として、景観や住環境の悪化という懸念のほかに水不足の心配を挙げる。竹富島には1日500トンの水が石垣島から送水されている。島で12年に開業したリゾートホテル「星のや竹富島」が100トンを独自で契約し、島民は400トンで生活している。島民の水使用量は年間平均約320トン。余剰があるとして、RJエステートは行政と調整し1日40トンの使用許可を得ている。

 竹富島を守る会の阿佐伊拓会長は「余剰があるとはいっても夏場のピーク時には足りなくならないか心配だ」と話す。

 竹富島は昔から島の伝統や風景を守る意識が強い。1986年には、島の伝統文化と美しい自然環境を残すことを理念にした「竹富島憲章」が制定されており、外部資本から土地を守るための項目も盛り込まれている。

 その状況の中でも唯一リゾート開発に至っている「星のや竹富島」だが、開業までに複雑な経緯をたどっている。同ホテルが建つ土地は、復帰直前に地元住民が手放したことで県外企業に買い占められていた。住民が県内の建設会社に持ち掛けて土地を買い戻したが、バブル経済がはじけたのを機に根抵当権が不良債権の回収会社に渡ったという。

 住民は今度はホテル運営会社の星野リゾート(長野県)に相談し、星野リゾートの子会社の竹富土地保有機構が債権を買い取り、星のや竹富島で出した収益で返済する仕組みになった。

 それでもホテル建設に反対する意見は根強くあった。星野リゾートは約2年を掛けて住民説明会や議論を繰り返し、低層コテージ型の整備計画で地元の容認を得るに至った。

 阿佐伊会長は「それぞれ建設までの経緯が違う。島を金もうけの道具には使ってほしくない」と語った。

 (「熱島・沖縄経済」取材班・中村優希)