繰り返される検察の不起訴 米軍の〝治外法権〟を許す地位協定とは 被疑者不詳でオスプレイ墜落書類送検


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 名護市安部で2016年12月に発生したオスプレイ墜落事故は、中城海上保安部が航空危険行為処罰法違反の疑いで被疑者不詳のまま書類送検し、誰も責任が問われないまま終結に向かっている。04年の沖国大米軍ヘリ墜落事故をはじめ、公務中の墜落事故は日米地位協定などを理由に米軍がパイロットの氏名の提供を拒否しており、検察も起訴を見送ってきた。防衛省は「米側の協力も得つつ所要の捜査を実施した結果だ」と国内法で米軍を裁けない現状を肯定しており“治外法権”は放置されたままだ。

 今回の事故では、中城海上保安部は証拠品となる機体を回収できなかっただけでなく、被疑者のパイロットの事情聴取もできなかった。米側が捜査を拒める背景には、日米地位協定17条10項に関する「合意議事録」がある。米軍の財産は「所在」を問わず、米軍の同意なき捜索と差し押さえを禁止している。同17条3項は、公務中の事件・事故は米側が一次裁判権を有すると定めており、今回も那覇地検は起訴を見送る公算が大きい。

 一方、県外では米軍機の墜落事故を日米が合同で検証した事例もある。1968年6月に福岡市の九州大学、77年9月に横浜市で起きた米軍偵察機の墜落事故、88年6月の愛媛県伊方町の伊方原発近くにヘリが墜落した事故では、米軍が警察などの現場検証を認めた。いずれも現行の日米地位協定が発効後で、沖縄で発生した墜落事故後の対応とは異なる。

 ただ、事件化はハードルが高い。横浜市の事故は、厚木基地を離陸直後のF4ファントム偵察機の墜落によって6軒の民家が焼け、母子3人が死亡、6人が重軽傷を負う惨事となったが、横浜地検は不起訴処分とした。米軍や地位協定が国内法の上位に位置する実態は当時から変わっていない。国内の米軍専用施設の7割が集中する沖縄では日常的に米軍機が飛び交っており、必然的に事故の確率も高くなる。政府は危険性除去として普天間飛行場の辺野古移設を進めるが、飛行経路を順守しない米軍機の飛行は常態化しており、生活圏を飛行しないという保証はない。

 玉城デニー知事は25日に出席した沖縄等米軍基地問題議員懇談会との意見交換会で「地位協定の問題は日本国の主権の問題だ」と語気を強めた。だが、対米関係を最重要視する日本側が米軍の意向に反してまで事件化に尽力する可能性は低い。

 生命と財産を危険にさらし続ける米軍機の事故を巡る日本側の不起訴の判断を放置せず、主権者の国民が検察審査会などで検察の決定を精査していくことも今後は求められそうだ。
 (松堂秀樹)