沖縄のモノレール 迫る新駅延長 深刻さ増す混雑 ダイヤ改正、全国共通IC券も「限界」


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降車客でごった返す県庁前駅のホーム=26日、那覇市久茂地

 沖縄都市モノレール(ゆいレール)は10月1日、那覇市の首里駅から浦添市のてだこ浦西駅までの延長区間約4キロで運行を開始する。2003年の開業から約16年、那覇から先の浦添市まで軌道が延びる第2の開業を迎える。ゆいレールの現状と課題、展望を読み解く。

 延長区間の開業まであと5日となった26日朝。公共施設や企業、商業施設が集中する「県庁前駅」は出勤する会社員らであふれていた。車内はスーツケースを引く観光客や制服姿の学生もひしめきあう。通勤・通学時間帯の午前8時台は4分間隔でモノレールが運行しているが、到着した車両のドアが開くたび、ほぼ満員状態の乗客がホームに吐き出されていく。

 4~8月のゆいレールの利用者は1日平均5万3791人に上る。開業初年度の3万1905人と比べて約1・7倍に増えている。30年度には同7万5千人が乗車するとの需要予測があり、車内混雑の対策は喫緊の課題だ。

 混雑の要因は、開業から16年で認知度や利便性について理解が高まって県民の利用が増加していることに加え、観光客の利用が大きく伸びていることがある。ゆいレール開業の03年度に約500万人だった沖縄の入域観光客数は1千万人に迫るまでになっている。

 また、乗客数が多い駅を見ると那覇空港と県庁前に次いでおもろまち、首里、小禄など那覇市内でも人口増加率が高い地域が続いており、沖縄の人口増が続くことも乗客増の一つの要因になっているとみられる。

 現状でも朝夕を中心に混雑がひどい中で、浦添延長に伴って利用客のさらなる増加は確実だ。首里駅からおもろまち駅まで通勤で利用している団体職員の新里有紗さん(24)=那覇市=は「首里は始発駅なので8時台に乗っても座れたが、駅を通過するごとに混雑度合いが増していた。浦西駅までの開業で便利になるが、さらに混雑すると思う」と10月以降の対策を求める。

 沖縄都市モノレール社は10月1日からダイヤを改正し、4分間隔で運行している時間帯を長くすることで通勤・通学時の混雑緩和を図ろうという考えだ。

 加えて海外客を含め観光客は県内専用のIC乗車券「OKICA(オキカ)」を持っていない層が多く、観光客が多く利用する時間帯は券売機前や改札の混雑も著しい。モノレール社は「Suica(スイカ)」など全国共通の交通系ICカードの利用ができるよう、20年4月の導入をめどにシステム改修を進める。

 だが、現在の2両編成のままでは混雑の抜本的な改善には限界があるというのが大方の見方だ。モノレール社の担当者は「安全などの関係上、運行の間隔を4分より詰めることは難しい。1日7万5千人に対応するには、最終的に3両化が必要になる」と説明した。
 (外間愛也)