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小泉氏のセクシー発言 国際社会に伝わる言葉を<佐藤優のウチナー評論>


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 小泉進次郎環境相が22日、出張先のニューヨークで多くの国の記者を対象とする共同会見を行った際の「セクシー」発言が問題になっている。

 〈小泉進次郎環境相は23日、気候変動問題に「セクシーに取り組む」とした自身の発言の真意を記者団に問われ「説明すること自体がセクシーじゃない。やぼな説明は要らない」と述べた。/記者から「どういった意味で言ったのか」と聞かれた小泉氏は「それをどういう意味かと説明すること自体がセクシーじゃないよね」と返答。詳しい説明は避けた。/小泉氏は22日の記者会見で「政治には非常に多くの問題があり、時には退屈だ。気候変動のような大きな問題は楽しく、クールで、セクシーに取り組むべきだ」と英語で発言。ロイター通信が取り上げるなど、海外でも報じられた〉(23日本紙電子版)。

 小泉氏はアメリカ留学の経験もあり、英語に堪能だ。ユーモアのセンスもある。ただし、「気候変動のような大きな問題は楽しく、クールで、セクシーに取り組むべきだ」という表現については、二重の意味で問題がある。

 第1は、この発言が自らの内発的意見ではなく、他人の意見に同意したという形式を取っていることだ。政治家にとって重要なのは内発的な言葉だ。特に気候変動の仕事は、環境相である小泉氏にとって重要事項のはずだ。ならば、他者の見解に同意するのではなく自分の言葉で語るべきだ。

 第2は、セクシーという言葉の持つ語感だ。小泉氏が「セクシー」という言葉を用いたことが日本のインターネット空間では物議を醸している。舛添要一氏は22日、ツイッターで、小泉氏の発言について、〈言語明瞭、意味不明瞭。金曜日に地球温暖化対策の実行を訴えた400万人の世界の若者は、がっかりするだろう。だから2時間前に、彼に注意する先輩が必要と私がツイートしたのである〉とつぶやいた。

 これは、英語に堪能で国際政治の実情に通暁している舛添氏の小泉氏に対する好意的助言として受け止めるべきだ。友人間など、すでに信頼関係ができあがっている人の間で「セクシー」という言葉を使うならば、「かっこいい」とか「イケてる」というような意味で受け止められる。

 しかし、公式の席で「セクシー」と言うと、下品な発言と受け止められるリスクがある。こういう性的な言葉を外交の場で使うことは少ないと思う。国連のような国際会議の席では、下品と受け止められるような表現は極力、避けた方がいい。

 日本の首相や外相が国際会議で発言するときは、言葉の言い回しがどのように受け止められるかについては、外務省の専門家が徹底的にチェックしている。難しいテーマを扱うときは、外国人の専門家から助言を得ることもある。小泉氏に関しても、外国で発言する際には、事前に専門家の説明を詳しく聞いておくことが重要だ。

 政治には言葉の芸術という面がある。玉城デニー知事が外遊し、演説する際にも、沖縄の意思が、論理、心情の両面で伝わる工夫をすることが重要だ。幸い米国や中南米諸国には沖縄人同胞が多数いる。現地の言語と習慣に通暁したウチナーンチュの力を玉城知事の言葉に生かすことが重要と思う。

(作家・元外務省主任分析官)