ゆいレール駅周辺進むインフラ整備 新たな交通要衝へ 人手不足、開業に間に合わない施設も


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石嶺駅を出発し、経塚駅へ到着する列車=13日午後、浦添市前田

 沖縄都市モノレール(ゆいレール)の浦添延長区間の開業で、「石嶺」「経塚」「浦添前田」「てだこ浦西」の新駅周辺では駅舎だけでなくさまざまなインフラ整備が進み、新たな交通の要衝として利便性の向上が図られる。

 27日午前、浦添市の経塚駅周辺では作業員が道路側溝の工事や道路標示の設置に追われていた。建設業の人手不足などが要因となり、延長開業に間に合わない施設も散見される。浦添前田駅は駅舎北側の階段とエレベーターの整備が遅れており、開業後は当分の間、南側からしか駅舎に出入りできない。

 開業を4日後に控えた現在も、駅周辺で急ピッチの整備作業が続いている。

 浦添延長後の新たな起点・終点となるてだこ浦西駅には、駅直通の「パークアンドライド駐車場」が整備される。本島中北部から那覇市に通勤する人々が、新駅で自家用車からモノレールに乗り換えることで、那覇市街地の渋滞緩和につなげるのが狙いだ。

 開業前日の30日から利用が始まり、県は定期駐車の利用者を募集している。だが、今月26日時点の申込数は約140台にとどまり、目標の800台に届いていない。担当者は「浸透にはもう少し時間がかかる」と語り、施設のさらなる周知が課題となる。

 てだこ浦西駅周辺では、沖縄自動車道と結節する「幸地インターチェンジ(IC)」も2024年の供用開始に向け整備が進められている。高速道路とモノレール軌道を直結して円滑な乗り継ぎを可能にすることで、モノレールと高速バスが一体となった公共交通ネットワークの構築を視野に入れている。

 那覇都市圏の渋滞緩和で軸となる公共交通機関として、延伸するゆいレールに期待される役割は大きくなっている。既に車両混雑がひどく大幅な乗客増への対応が課題となる現状で、やはり輸送能力の抜本的な強化が県全体の交通政策上も急務となる。

 沖縄都市モノレールと県、那覇市、浦添市の4者は、22年度から3両編成の車両を走らせることで動きを始めている。

 沖縄都市モノレールは今年3月末現在、約27億1千万円の債務超過の状態にあり、現状では金融機関からの新たな借金による資金調達ができない。車両購入のほか車両基地の整備、駅のホームドア改修など、3両化に必要な事業費は約280億円と見込まれ、巨額の費用をどう捻出するかは最大の課題となる。

 美里義雅社長は「県と那覇市からの借入金を株式化するDESという手法で債務超過を解消したいと考えており、両組織に要請をしている。まだ具体的な回答はないが、ぜひ協力してもらいたい」と、県や沿線自治体との連携を強調する。

 さらに、車両の製造を予定している日立製作所は、海外からの受注が立て込んでることから、22年度までに車両を新造することが難しいという事情もある。玉城デニー知事は「新造車両の22年までの完成を要請していきたい」と関係各所への働き掛けを強めていく姿勢を示している。
 (吉田早希)