宮古島市長「圧力」姿勢変えず 原告市民提訴議案取り下げ 「名誉毀損」を強調


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市民提訴の議案について「今議会での提案は考えていない」と述べる下地敏彦宮古島市長=24日、宮古島市議会

 宮古島市の不法投棄ごみ撤去事業の住民訴訟を巡り、市が原告市民を名誉毀損(きそん)で損害賠償を求め提訴する議案が提案されてから3週間。宮古島市議会の9月定例会最終日前日の24日、下地敏彦市長は本会議で精査のために1度取り下げていた議案について「今議会において、追加の提案は考えていない」と述べた。市民提訴を巡る騒動はいったんの終幕を迎えたが、市議会後の会見で下地市長は、市が名誉毀損の「被害者」として司法的救済を求めて提訴することは許容されるべきだとの認識を示し「法治国家であれば当然の権利行使」と主張した。問題の火種はくすぶったままだ。

「反民主主義」

 下地市長は議案取り下げの理由について、市が提訴議案を提出したことで市議会で活発に議論され、各種報道で取り上げられたことを挙げた上で、「広く市民へ市の考え方を伝えることができたのは、大変意義があった」と説明した。

 しかし一方で「住民運動だからといって、他人の名誉を毀損していいことにはならない」と強調。集会などで、市が違法行為をしたかのような主張をする市民を問題視した。また「法治国家」という言葉に触れながら、住民訴訟で言い渡された最高裁の判決に従うべきだとし、原告市民らの行動については「いかがなものかと思う」としており、「原告市民が市の名誉を毀損した」という認識はあくまで変えていない。

 20日の一般質問では、市民提訴議案を巡って、各種報道などでさまざまな批判が展開されている状況を指摘された。長濱政治副市長は「名誉毀損を受けた被害者である市に対して、プレッシャーをかけて訴えの提起を抑制するのは、反民主主義であり、法の支配の実現を損ねているのではないか」と答弁。批判を受けている市はあくまで「被害者」であるとの立場を強調する持論を展開し、与党市議からの賛同の声と、野党市議の驚きあきれる声とで議場はざわめいた。

くすぶる火種

 長濱副市長は議会終了後に報道陣の取材に応じた際、反民主主義という言葉の意図について「なぜ市民らの主張だけが民主主義なのか。(名誉毀損の)被害者の側も守られる必要がある」と説明。「名誉毀損は多分に主観的なもので、被害を受けたと思ったら市としても訴えていいものだ」との見解を示しており、市側に提訴の正当性があることを主張した。

 同内容の議案を今後市議会に提案するかどうかについて下地市長は「今後、原告側がどのような対応をするのか、市としてはその行動を注視して対処する」と述べるにとどめている。完全撤回とは言えず、今後臨時会や12月定例会での「再提案」の可能性もぬぐえない。暗にプレッシャーを市民へかけ続ける姿勢に変わりはなく、市側の動向には引き続き注視が必要だ。
 (真栄城潤一)