【記者解説】〝デニーらしさ〟を生かした課題解決とは… 玉城知事就任1年


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フジロックのアトミック・カフェでギターを演奏する玉城デニー知事=7月29日、新潟県の苗場スキー場

 玉城デニー知事は昨年9月30日の知事選当選から1年を迎えた。翁長雄志前知事の後継として圧勝したものの、日米両政府に強く求めてきた「対話」による解決は見い出せないまま、埋め立て工事が進む辺野古移設問題への対応に追われた1年だった。

 玉城知事が「対話」と同等に意識しているのが「発信力」だ。ラジオパーソナリティーの経験から、情報や考えを発信することで新たなネットワークが生まれることを熟知しており、“デニーらしさ”を生かした課題解決に向けた協力網づくりのため新設されたのが「万国津梁(しんりょう)会議」だ。

 米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設を含む基地問題をはじめ、玉城知事が山積する沖縄の課題の打開に向け設置した万国津梁会議は既に始動。県の「沖縄21世紀ビジョン」の実現に向け、基地問題、虐待防止、持続可能な開発を意味する「SDGs」の3分野で先行して会合を開催しており、有識者が活発な議論を展開している。

 課題解決と同時に、玉城県政が示す青写真は大きい。国際物流拠点としての発展や県産ブランドの海外展開、大型MICE施設を生かした新たなビジネスの創造など「日本経済の再生に貢献する沖縄」の実現を掲げる。

 玉城知事はあらゆる機会で「誰一人取り残さない社会」を目指すことを公言しており、過剰な基地負担の軽減と沖縄振興の拡充を同時に進めながら、弱者に優しい社会を実現するという難しいかじ取りを迫られている。

 一方、万国津梁会議の参加者から「具体的な達成目標がない」との苦言も出ている。政府は辺野古移設問題で対立する玉城県政を介さず、直接市町村に配分する沖縄振興特定事業推進費を2019年度に創設するなど、市町村との連携に不安要素も出ている。

 沖縄全体で発展を図るためには離島や過疎地域を含めた市町村との連携が不可欠だ。知事の掲げる「新時代沖縄」は早々に実現性を問われることになる。「誇りある豊かさ」(玉城知事)をいかに実現していくかも問われている。
 (松堂秀樹)