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濱口監督作品に銀獅子賞 ベネチア映画祭 「悪は存在しない」 三大映画祭・米アカデミー受賞 黒沢氏以来


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 【ベネチア共同】イタリアで開催されていた世界三大映画祭の一つ、第80回ベネチア国際映画祭の授賞式が9日夜(日本時間10日未明)開かれ、濱口竜介監督の「悪は存在しない」が最高賞・金獅子賞に次ぐ銀獅子賞(審査員大賞)に選ばれた。
 濱口監督はカンヌとベルリンの両国際映画祭に加え、米アカデミー賞でも賞を射止めている。世界三大映画祭のコンペティション部門とアカデミー賞の全てで賞を獲得するのは、日本人では黒沢明監督以来の快挙。
 ベネチア国際映画祭での日本関連の受賞は、2020年に映画「スパイの妻」で黒沢清監督が銀獅子賞(監督賞)を受賞して以来、3年ぶり。
 「悪は―」は、音楽家の石橋英子さんからライブパフォーマンス用の映像制作の依頼を受け、濱口監督が脚本を書き下ろした作品。濱口監督は受賞後のスピーチで「この素晴らしい賞をいただけるとは、企画が始まった時には全く考えていなかった。発案者である石橋英子さんの音楽が、私を今まで体験したことがない仕事に導いてくれた」と話した。
 濱口監督は1978年、川崎市生まれ。東京芸術大大学院で映画作りを学び、「偶然と想像」でベルリン国際映画祭銀熊賞(21年、審査員大賞)、「ドライブ・マイ・カー」でカンヌ国際映画祭脚本賞(同年)とアカデミー賞国際長編映画賞(22年)を受賞した。
 「悪は―」は、自然豊かな長野県の集落が舞台。新型コロナウイルス禍で経営難に陥り、政府の補助金を得てグランピング施設の建設を計画する芸能事務所が、集落の水源に汚水を排出しようとしていることが分かり、地域に動揺が広がるさまを描く。日本では24年に公開予定。
 コンペ部門は23作品で競われ、金獅子賞は「哀れなるものたち」(ヨルゴス・ランティモス監督)。斬新な作品を集めたオリゾンティ部門に出品された「ほかげ」(塚本晋也監督)は受賞を逃した。
 名作の修復版を上映するクラシック部門で相米慎二監督の「お引越し」が最優秀修復作品賞を受賞した。