金正恩氏、訪ロで「新局面」　食料支援も協議、非軍事分野も拡大か

　【束草（韓国北東部）共同＝粟倉義勝】北朝鮮メディアは１８日、ロシアを訪問した金正恩（キムジョンウン）朝鮮労働党総書記が１７日に極東ウラジオストクから特別列車で帰国の途に就いたと報じ、訪問が成功裏に終わり、金正恩氏が「朝ロ関係の強化発展で新たな転換局面を開いた」と強調した。タス通信によると、訪ロに同行したロシアのマツェゴラ駐北朝鮮大使は、金正恩氏から水力発電の協力の可能性を聞かれたほか、北朝鮮への食料支援も協議したことを明らかにした。
　ロシアは、経済協力などを扱う政府間委員会が１１月に平壌で開催されると表明。両国は軍事分野以外に、北朝鮮住民の生活に直結するエネルギーや食料供給でも協力拡大を図るとみられる。
　金正恩氏のロシア滞在は１２日から６日間にわたった。この間にロシアのプーチン大統領は、北朝鮮との軍事技術協力に「展望がある」と発言。北朝鮮メディアは１３日のプーチン、金正恩両氏の首脳会談で、安全保障分野の「重大な問題」で「満足できる合意と見解の一致」に達したと伝えた。
　日米韓は、ウクライナ侵攻を続けるロシアに北朝鮮が弾薬を供給する一方、ロシアが弾道ミサイルなどの技術を北朝鮮に提供することを警戒している。
　北朝鮮は新型コロナウイルス対策の出入国規制を始めた２０２０年１月以降、初めての首脳外交を中国ではなく、ロシアを相手に行った。北朝鮮との軍事的緊張が高まっている米国との対話を模索する中国をけん制する思惑もありそうだ。
　ロ朝首脳会談は極東アムール州のボストーチヌイ宇宙基地で行われた。金正恩氏はハバロフスク地方コムソモリスクナアムーレにある戦闘機工場や、ロシア太平洋艦隊の司令部があるウラジオストクに停泊中のフリゲート艦など機密性の高い重要軍事施設を次々視察。
　１７日にはウラジオストクの極東連邦大で北朝鮮の留学生らと会い、沿海地方水族館でイルカショーを観覧。飼料合成工場も視察した。移動は特別列車で行い、ロシアメディアは同国内での走行距離が４千キロを超えたと伝えている。
ロシアから帰国の途に就く北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記（左）＝１７日、ウラジオストク（朝鮮中央通信＝共同）