有料

ロシアの拒否権剝奪訴え ゼレンスキー氏、安保理に 欧米の結束に不安も


ロシアの拒否権剝奪訴え ゼレンスキー氏、安保理に 欧米の結束に不安も 国連安全保障理事会のウクライナ情勢に関する会合に臨むゼレンスキー大統領=20日、ニューヨーク(代表撮影・共同)
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 【ニューヨーク、ベルリン共同=飯沼賢一、斉藤範子】ウクライナのゼレンスキー大統領は20日、国連安全保障理事会の会合に出席し、常任理事国のロシアが「拒否権を悪用している」として剝奪を訴えた。ロシアの侵攻に対し、国連の場で支持拡大を図ったが、自国産の穀物輸出を巡り対立する隣国ポーランドのモラウィエツキ首相は同日、ウクライナへの武器供与停止に言及。支援継続への欧米の結束に不安が生じている。
 ゼレンスキー氏がニューヨークの国連本部で安保理に直接出席したのは初めて。ロシアの代表団も参加したが、ラブロフ外相はゼレンスキー氏の離席後、会場に入った。
 ゼレンスキー氏は「侵略者が拒否権を握っていることが、国連を行き詰まりに追い込んでいる」と指摘。国連加盟国の3分の2以上が賛成すれば拒否権を無効にできる仕組みの創設を提案し、常任理事国には日本やドイツ、インドが含まれるべきだと改革を主張した。
 ラブロフ氏は「拒否権は組織を分断させるような決定を阻止する正当な手段だ」と反論した。
 一方、モラウィエツキ氏は20日「ウクライナにもう武器を送っていない」と地元テレビで述べた。ゼレンスキー氏が19日の国連総会一般討論演説で、ポーランド、ハンガリー、スロバキアによるウクライナ産穀物の輸入規制に関し「ロシアを手助けしている」と批判したことなどに反発した。
 ポーランド政府報道官は21日、首相が言及した武器供与停止について「以前に合意した弾薬と武器だけを提供する」と述べた。
 ウクライナ産の農作物は主に黒海経由で中東などに輸出されてきたが侵攻で停滞。安価な穀物の流入を警戒した3カ国が、欧州連合(EU)の統一方針に反して独自に輸入を規制したため、ウクライナは世界貿易機関(WTO)に提訴した。

国連安全保障理事会のウクライナ情勢に関する会合に臨むゼレンスキー大統領=20日、ニューヨーク(代表撮影・共同)