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支援懐疑論台頭、成果乏しく ゼレンスキー氏、危機感あらわ


支援懐疑論台頭、成果乏しく ゼレンスキー氏、危機感あらわ ウクライナと各国関係(写真はロイター)
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 ウクライナのゼレンスキー大統領が昨年12月以来となった4日間の訪米日程を終えた。ロシアに立ち向かう英雄として歓待された前回と状況は変わり、米世論や議会では巨額のウクライナ支援継続に懐疑論が台頭。戦時の大統領は敗戦の可能性にも言及して支援を直訴し、危機感をあらわにしたものの、熱望していた長射程兵器供与も見送られ、期待した成果を得られなかった。
 「支援を得られなければ戦争に負ける」。ゼレンスキー氏は21日、米連邦議会を訪れ、ロシアに対する反転攻勢の生命線となる軍事支援の継続を必死に訴えた。
 前回の訪米では上下両院合同会議で演説し、議員から盛大な拍手を送られた。今回は対照的に、共和党が多数派を占める下院の指導部との会談は公開されなかった。
 「米国第一」を掲げる党内保守強硬派から突き上げられる共和党のマッカーシー下院議長は、ゼレンスキー氏が求めた上下両院合同会議の開催を拒否。「一度やっただろう」と突き放した。
 戦争の終わりが見えない中、共和党内で支援への疑問は膨らみ続ける。CBSテレビの9月の世論調査によると、共和党支持者の56%が支援を減らすべきだと回答した。 強硬派議員約30人は、追加支援予算に反対する書簡を政権に送付。名を連ねたバンス上院議員は「もうたくさんだ。同僚も私もノーだ」とX(旧ツイッター)に不満をぶちまけた。
 ゼレンスキー氏が今回の訪米で目玉としたかったのが、昨年来、再三供与を求めてきた長射程の地対地ミサイル「ATACMS」だ。ロシア領内を狙えることから米政権は供与を慎重に検討。訪米直前には今秋の供与を考慮しているとの報道があったが、結局見送られた。
 「期待していた分、ショックは大きい」(ウクライナ当局者)。年明けには米大統領選が本格化し、政権が大胆な支援に踏み切りにくくなるとの見方があり、早期供与の現実味は薄れている。
 ワシントン訪問に先立つ国連総会では、グローバルサウスと呼ばれる新興・途上国の引き込みに奔走したゼレンスキー氏。だがロシアと関係を保つブラジルやアフリカ諸国は中立の立場を崩さなかった。
 一般討論演説では、侵攻開始当初から人道・軍事の両面でウクライナを支えてきた隣国ポーランドを念頭に、ロシアの手助けをしているとの趣旨の発言をしてポーランドの怒りを買った。同国のドゥダ大統領は記者団に、ウクライナを溺れている人にたとえ「(助けようとすれば)私たちが溺れてしまうかもしれない」と述べ、友好国との間に生じた溝の深さを感じさせた。(ワシントン共同=高木良平、飯沼賢一)