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米国版はやぶさ帰還 小惑星から石、日本も分析 太陽系の謎解く鍵に 日米採取の石比較へ


米国版はやぶさ帰還 小惑星から石、日本も分析 太陽系の謎解く鍵に 日米採取の石比較へ オシリス・レックスの探査の流れ(写真はNASAなど提供)
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 【ワシントン共同=井口雄一郎】米国版「はやぶさ」とも呼ばれ、小惑星ベンヌで石の採取に成功した米航空宇宙局(NASA)の探査機オシリス・レックスのカプセルが24日午前(日本時間同日深夜)、西部ユタ州の砂漠に帰還した。小惑星から石などの試料を持ち帰るのは、日本の「はやぶさ」と「はやぶさ2」に続き世界で3例目。国別では2カ国目となる。
 試料は、はやぶさ2の50倍に当たる250グラム前後と推定され、石の大きさや重さを確認した上で、各国の研究者に分配する。日本には0・5%が分配される。NASAは地球上の物質が混ざるのを防ぐ処置を施し、25日以降に南部テキサス州のジョンソン宇宙センターに運んで開封する。
 石は太陽系最初期の様子を刻む「タイムカプセル」だ。米国を中心とした探査チームが鉱物の構成や生命の部品となりうるアミノ酸の有無などを分析する。日米は、はやぶさ2とオシリスが届けた石を比べながら惑星形成の歴史や、地球の生命の起源を読み解く。地球に衝突する小惑星の回避対策にも役立てる。
 ベンヌは直径500メートルほどで、地球に近い軌道を回っている。りゅうぐうと同様、46億年前に太陽系ができた頃にあった水の痕跡や有機物を含むとみられる。こうした天体が太古の地球に衝突し海や生物の原材料をもたらした可能性がある。
 オシリスは2016年に打ち上げられ、20年にベンヌで石を採取した。探査機の本体は約62億キロ、7年間の旅から地球上空に戻るとカプセルを放出し、着地はせずに次の小惑星観測に向かった。
24日、ユタ州の砂漠に着地した探査機オシリス・レックスのカプセルを梱包する回収チーム(NASA提供・共同)
小惑星ベンヌ。探査機オシリス・レックスが上空24キロから撮影した画像を合成(NASA提供・共同)
 米探査機オシリス・レックスが小惑星ベンヌから地球に届けた石の一部は、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が日本国内の施設で成分などを分析する。探査機「はやぶさ2」が小惑星りゅうぐうで採取した石からは、水やアミノ酸が発見されており、二つの小惑星の石を比較することは、太陽系の歴史や地球の生命の謎を解く重要な鍵になると期待されている。
 りゅうぐうは、地球と火星の公転軌道の近くを回る大きさ約900メートルの小惑星。はやぶさ2が石や砂など計5・4グラムを採取し、2020年に地球に届けた。これまで生命に不可欠なタンパク質の材料となるアミノ酸や、液体の水が含まれていることが分かっている。
 今後、ベンヌの石でも水やアミノ酸が見つかり、地球由来のものと特徴が似ていれば、その起源は小惑星にあったことの裏付けになる。含まれる鉱物や有機物が違った場合は、宇宙でどう化学反応が進み、地球の生命につながったか、過程を検討することもできる。
海洋研究開発機構の伊藤元雄主任研究員(惑星物質科学)は「りゅうぐうは太陽系の最初期の記憶を伝える(現状で)たった一つの証拠だ。比較研究でりゅうぐうの特殊性や普遍性が明らかになる可能性がある」と指摘する。