水俣病特別措置法で救済策から漏れた原告128人全員を水俣病と認めた27日の大阪地裁判決は、国のこれまでの救済範囲よりも対象を幅広く解釈し、現在でも未救済の患者がいることを明白にした。国の患者認定基準や特措法の線引きの問題点を浮き彫りにし、国に救済政策の根本的な転換を迫ったと言える。
国側は「水銀暴露から4年を超えれば発症しない」としたが、判決は遅発性の水俣病の存在を認定。仮に罹患(りかん)していたとしても除斥期間が経過し賠償義務を負わないとの主張も退けた。
また、2004年最高裁判決は国と熊本県の賠償責任を原因企業チッソの4分の1としたが、今回は連帯支払い義務を認めており、責任は3者で同等と判断した。
国はこれまで認定基準よりも幅広く被害を認定する司法判断が相次いでも、基準の抜本的な見直しをしなかった。その代わりに09年施行の特措法を含む2回の「政治解決」を図ったが、漏れ落ちた人の法廷闘争は続いている。
水俣病は公式確認から67年が経過したが、被害の全容は現在も明らかになっていない。被害者の高齢化も進んでいる。国は司法の警告を真摯(しんし)に受け止めるべきだ。
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救済策 根本的転換迫る
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琉球新報朝刊
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