「長い間お疲れさまでした」。大阪地裁の達野ゆき裁判長が判決言い渡し後にそう告げると、法廷には拍手が鳴り響いた。提訴から9年。「良かった」「よく頑張った」。治ることのない体の痛みに苦しみ、行政による救済から取り残された被害者たちは手を取り合い、涙を浮かべて喜んだ。
午後3時過ぎ、地裁前には判決を聞いた弁護士2人が笑顔で駆け出してきた。両手で広げた紙に書かれていたのは「国・熊本県の患者切り捨てを断罪!」。集まった約50人の原告や支援者から一斉に歓声が上がった。
判決後に大阪市内で開かれた集会で、水俣病特別措置法で一部が対象外地域となる鹿児島県阿久根市出身の原告前田芳枝さん(74)は、これまで体の震えを隠して生きてきたと告白。「不当な線引きだと思っていた。認められて本当にうれしい」と喜びをかみしめた。
弁護団の徳井義幸団長は「水俣病の救済問題を大きく前進させる判決だ」と評価。来年3月の判決を控える熊本訴訟の森正直原告団長は「この判決で熊本にも弾みがつく」と喜んだ。
判決後の記者会見で喜びを語る原告の前田芳枝さん(右)ら=27日午後、大阪市