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領土争いでアゼル完全勝利


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 アゼルバイジャンから独立を宣言していたアルメニア系住民の行政府「ナゴルノカラバフ共和国」が年内解散を表明したことで、旧ソ連圏で長年続く領土紛争はアゼルバイジャンの完全勝利で決着する見通しになった。ただ、住み慣れた土地を捨てアルメニアに逃れるとみられる12万人もの住民の将来には不安がつきまとう。紛争の最終的解決を目指すアルメニアのパシニャン首相が野党の一層の批判を受けるのも確実。政権が存続できるかは不透明だ。
 ロシアの対応に不満を抱くパシニャン氏は欧米接近を強めるとみられ、ウクライナ侵攻で旧ソ連圏での求心力が低下するロシアにとってはさらなる打撃になりそうだ。
 2018年に民主化要求デモで親ロ政権を倒し実権を握ったパシニャン氏は、ナゴルノカラバフを巡る20年のアゼルバイジャンとの大規模衝突で敗北。軍事的展望はないと悟ったとみられる。ロシア主導の集団安全保障条約機構(CSTO)がアルメニアを支援しなかったことでロシアとの「同盟関係」を見限り、欧米の仲介でアゼルバイジャンとの平和条約締結を模索するようになった。
 ロシアは難しい立場に立たされた。ウクライナ侵攻に手いっぱいで、ナゴルノカラバフ問題は「2国間で解決してほしい」のが本音だ。だが介入を控えたことで、最大の同盟国の一つだったアルメニアまでが米国との軍事演習実施など北大西洋条約機構(NATO)寄りの姿勢を見せ始めた。アルメニアとの関係は今後も頭痛の種になりそうだ。
 (モスクワ共同=佐藤親賢)