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「決められぬ議会」混乱再燃も 保守強硬派 ウクライナ支援を削減


「決められぬ議会」混乱再燃も 保守強硬派 ウクライナ支援を削減 記者会見に臨む米共和党のマッカーシー下院議長(右)とエマー院内幹事=9月30日、ワシントン(AP=共同)
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 米政府のつなぎ予算が成立した。成立まで野党共和党の一部の保守強硬派に振り回され、「決められない議会」を露呈。強硬派は共和党のマッカーシー下院議長への不満を募らせ、民主党は問題を先送りしただけだと批判。議会内の対立構図は変わっておらず、混乱は続きそうだ。
 「数週間にわたり、過激な下院共和党は、何百万人もの国民に壊滅的な打撃を与えるような大幅な予算削減を要求した」。バイデン大統領はつなぎ予算の議会通過を歓迎する声明で、強硬派を強く批判した。
 2024会計年度(23年10月~24年9月)予算を巡っては今年5月、歳出削減を求めるマッカーシー氏にバイデン氏が譲歩。双方の合意内容を盛り込んだ法案を議会が超党派で可決していた。
 しかし、下院共和党の保守強硬派はウクライナ支援を含め、合意水準以上の歳出削減を要求。身内のマッカーシー氏に議長解任請求をちらつかせて迫った。
 マッカーシー氏は強硬派の意見を取り入れたつなぎ予算案を9月29日に通そうとしたが、強硬派は「不十分」として背を向け、否決に。下院民主党トップのジェフリーズ院内総務は「共和党の内戦が数カ月も続いている」とため息をついた。
 米国の新年度まで12時間を切った9月30日午後、マッカーシー氏は態度を一変。強硬派の抵抗を押し切り与野党の対立点を極力除いたつなぎ法案を採決する方針を打ち出し、事態は急展開した。
 法案は民主党のほぼ全員の賛成を得る一方、共和党の約4割が反対した。マッカーシー氏は、共和党内で解任を求める声が強まる可能性を問われると「国民のために自分の職を危険にさらす必要があるなら、そうする」と胸を張った。
 要求を退けられた強硬派は、議長をすげ替えて影響力をさらに拡大することを画策する。「次の議長」と推すのがマッカーシー氏よりも保守的とされるエマー院内幹事だ。
 仮に入れ替わる事態になれば、民主党との対立が一層先鋭化するのは確実。本格予算成立までに、議会がさらに混迷する懸念は拭えない。
 「ふさわしいディール(取引)ができない場合、私なら閉鎖する」。24年大統領選の共和党候補指名争いで独走するトランプ前大統領はNBCテレビのインタビューで述べた。経済や安全保障にも及ぶ多大な悪影響を度外視し、混乱をあおっている。
 議会襲撃など四つの事件で起訴された自身に対する連邦政府の捜査が鈍ることへの期待も隠そうとしない。「政治的な起訴のための資金を打ち切る最後の機会になる」。自身を熱狂的に支持する強硬派をたきつけた。(ワシントン共同=建部佑介、高木良平)
記者会見に臨む米共和党のマッカーシー下院議長(右)とエマー院内幹事=9月30日、ワシントン(AP=共同)