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欧米3氏ノーベル物理賞 「アト秒」の光で電子観察


欧米3氏ノーベル物理賞 「アト秒」の光で電子観察 「アト秒」の短さ
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 【ストックホルム共同】スウェーデンの王立科学アカデミーは3日、2023年のノーベル物理学賞を、「アト秒」(アトは100京分の1)というごく一瞬だけ光るレーザーを使って物質中の電子の動きを捉える手法を開発した欧米の3氏に授与すると発表した。カメラのフラッシュに相当する技術で、電子の動きのように素早くて観測が非常に難しい現象の研究に新たな手段をもたらした。
 受賞が決まったのは、米オハイオ州立大のピエール・アゴスティーニ名誉教授、ドイツのミュンヘン大のフェレンツ・クラウス教授、スウェーデンのルンド大学のアンヌ・リュイリエ教授。
 半導体の開発などさまざまな材料の性質を知るためには内部の電子の動きを調べることが重要だが、動きが非常に速く捉えることが難しい。極めて短い時間だけ光を当てる技術が求められる。
 リュイリエ氏は1980年代後半、強力なレーザー光を希ガスに通すと波長の極めて短い光が発生する現象を発見。アゴスティーニ氏とクラウス氏はそれぞれ独自に実験に取り組み、2000年代初めに、光が当たる時間をアト秒単位まで短くできると証明した。
 電子の動きを捉えられるようになったことで、高性能な半導体や量子コンピューターの開発につながる可能性がある。王立科学アカデミーは授賞理由の解説で、がんなどの病気に関連する血液中の分子を見つけ出す新しい診断方法の開発が期待できると指摘した。
米オハイオ州立大のピエール・アゴスティーニ名誉教授 (大学ホームページから)
ドイツのミュンヘン大のフェレンツ・クラウス教授(MTI提供・AP=共同)
スウェーデンのルンド大学のアンヌ・リュイリエ教授(TT通信提供・AP=共同)
 ピエール・アゴスティーニ氏 米国生まれ。1968年にフランスのエクス・マルセイユ大で博士号取得。米オハイオ州立大名誉教授。
 フェレンツ・クラウス氏 62年、ハンガリー生まれ。61歳。91年にオーストリアのウィーン工科大で博士号取得。ドイツのマックス・プランク量子光学研究所長、ミュンヘン大教授。
 アンヌ・リュイリエ氏 58年、フランス生まれ。65歳。86年にフランスのパリ第6大(現ピエール・マリー・キュリー大)で博士号取得。スウェーデンのルンド大教授。