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米3氏 ノーベル化学賞 量子ドット研究 受賞者情報、誤送信


米3氏 ノーベル化学賞 量子ドット研究 受賞者情報、誤送信 量子ドットに期待される応用例
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 【ストックホルム共同】スウェーデンの王立科学アカデミーは4日、2023年のノーベル化学賞を、ナノメートル(ナノは10億分の1)サイズの「量子ドット」という微小な粒子を合成した、米国の大学や企業に所属する3氏に授与すると発表した。半導体やテレビのディスプレー、生体内の分子を観察する目印としても使える。幅広い範囲に応用できる革新的な技術を高く評価した。
 スウェーデン主要メディアは、発表に先立って受賞者の情報が地元の報道機関にメールで送られていたと報じた。王立科学アカデミーの担当者は発表記者会見で事実と認め「非常に遺憾で、原因を調査している」と述べた。選考に影響はないとしている。受賞者が漏れるのは極めて異例。
 授賞理由は「量子ドットの発見と合成」。3氏は、米企業に所属するアレクセイ・エキモフ氏のほか、マサチューセッツ工科大のムンジ・バウェンディ教授、コロンビア大のルイス・ブラス名誉教授。
 量子ドットは、ナノサイズの結晶の内部に電子を閉じ込めている。結晶の大きさを変えれば内部の電子のエネルギーも変化し、吸収したり放出したりする光の色を精密に調整できる。
 エキモフ氏とブラス氏は、1980年代初め、ナノサイズの粒子の結晶では、大きさに応じて光の波長などが変化する特殊な現象が起こることをそれぞれ独立して発見。バウェンディ氏は、サイズのばらつきが少ない高品質な量子ドットを製造する方法の開発に成功、産業化への道を開いた。
 吸収、放出する光の色を精密に変えられる特性を生かし解像度の高いテレビのディスプレーや照明で応用。生物の細胞内にある分子を見分けて働きを調べる標識として使われているほか、幅広い光を吸収できる太陽電池や半導体、小型のセンサー、量子コンピューターへの活用も進んでいる。
 授賞式は12月10日、スウェーデンで。賞金1100万クローナ(約1億5千万円)を3等分する。
アレクセイ・エキモフ氏(Nexdotのサイトから)
ムンジ・バウェンディ氏(ロイター=共同)
ルイス・ブラス氏(NTB Scanpix提供・AP=共同)