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イランに変革促す 人権抑圧に国民怒り


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 ノーベル賞委員会が平和賞にナルゲス・モハンマディさんを選んだのは、長年、人権を抑圧してきたイスラム革命体制に対して批判を込め、意識変革を促すためだと言える。ただイラン指導部が国民の切実な訴えに耳を傾ける可能性は低く、自由な社会の実現はなお遠い。
 イランでは1979年の革命以降、イスラム教に厳格な宗教指導者が最高位に君臨し国家を統治するという、世界でもまれな体制が続いている。革命体制下では表現や言論の自由が制限され、女性には国籍や宗教問わず公共の場で髪を隠すヘジャブ(スカーフ)の着用を法的に義務付けている。
 指導部が最優先する革命体制の維持には政情の安定が必須だ。そのため過去に起きた民主化や人権尊重を求める大規模な抗議活動に対しては、体制側が多数の死傷者を出す苛烈な弾圧を加えて抑え込んできた。
 デモが沈静化しても、国民の不満は高まっている。米国の制裁で経済は長らく低迷し、生活に苦しむ市民の怒りは常に体制側に向いている。体制が国民に誠実に向き合うべき時が来ている。
 (テヘラン共同=渡会五月)