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路上に遺体「友人見つからず」 ハマス襲撃の街


路上に遺体「友人見つからず」 ハマス襲撃の街 8日、イスラエル南部スデロトで、攻撃を受けた警察署のがれき撤去作業(AP=共同)
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 【スデロト(イスラエル南部)共同=平野雄吾】四輪駆動車の戦闘員が路上の市民を乱射した―。7日早朝に始まったイスラム組織ハマスによるイスラエルへの大規模攻撃。パレスチナ自治区ガザから数千発のロケット弾を発射し、多数の戦闘員をイスラエルに送り込んで次々と住民を襲撃した。「路上に10人ほど倒れていた」「死んでもおかしくなかった」。目撃した男性が7日夜、ガザに近いスデロトで当時の恐怖を共同通信の記者に語った。 (1面に関連)
 イスラエル当局はハマス戦闘員とイスラエル治安部隊との銃撃戦が続いていたスデロト中心部を封鎖。記者は中心部から約6キロの幹線道路で通行を止められた。付近には負傷者搬送用の緊急ヘリが待機し、救急車や軍用車両が頻繁に行き交う。多数のロケット弾を、イスラエルが防空システムで迎撃すると「バーン」という鈍い音が響いた。
 男性はイスラエル人のマオル・エルコビさん(24)。6日夜からスデロト周辺のレイムで開かれたパーティーに参加。約3千人の若者が夜通しでダンスに興じていた。
 だが7日早朝のロケット弾飛来で状況は一変。「初めは空を飛ぶロケット弾を見ても何かの冗談かと思った」。ただ会場に駆けつけた警察官が帰宅を命じて散会。参加者は走って逃げたが戦闘員の襲撃の方が早かった。
 とっさにエルコビさんは路上に止まっていた友人の車の後部座席に隠れた。四輪駆動車の戦闘員は「アラー・アクバル(神は偉大なり)」と叫びながら自動小銃を乱射。運転席と助手席に隠れた友人2人は被弾した。
 約5分後に車から出て近くのオレンジの木に登った。葉っぱに隠れ、約5メートルの高さで10時間以上待機した。断続的に響く銃声。死の恐怖に震え、神に祈った。「道路を見下ろすと約10人が倒れていた。2人は戦闘員の服装だった」。7日夕、銃声がやんだため、木から下りたところを救急車に保護されたエルコビさん。「車で撃たれた友人2人の行方が分からない」とうなだれた。
8日、イスラエル南部スデロトで、攻撃を受けた警察署のがれき撤去作業(AP=共同)