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ロケット弾次々 憎悪の連鎖 イスラエル南部、戦闘の街


ロケット弾次々 憎悪の連鎖 イスラエル南部、戦闘の街 イスラエル・スデロト、ガザ地区、エルサレム、テルアビブ
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 【スデロト共同=平野雄吾】「ロケット弾だ。避難しろ!」。警報が響き、イスラエル兵が叫ぶと、路上の市民は建物や車の陰に素早く伏せた。9日、パレスチナ自治区ガザから約3キロのイスラエル南部スデロト。ガザから飛来したロケット弾が次々と曇天に雲を引き、イスラエル軍の迎撃ミサイルが撃ち落とす。ドーンという爆発音が響いた。だが迎撃を逃れたロケット弾は各地に着弾し、炎が上がった。 (1面に関連)
 1分後、記者が立ち上がると、路上に小さな金属片がぱらぱら振ってきた。迎撃システム「アイアンドーム」がイスラム組織ハマスのロケット弾を撃ち落とした残骸だ。
 周囲で目に入るのは随所に立ち上る煙。駆けつけると、スーパー脇の路上で青い乗用車が白と黒の煙を上げて燃えている。ロケット弾が直撃したようだ。幸い人は乗っていない。兵士らが消火活動を開始した。
 この日、スデロトでは2日ぶりにスーパーが営業し、市民が野菜やパスタなどを大量購入していた。「いつまた閉店になるか分からない」と語るアビさん(51)は「ガザからパレスチナ人を一掃すべきだ」と憎しみをあらわにした。子どもを抱える家庭の多くが避難したスデロトでは多数の兵士が巡回、警戒を続ける。公園には人けがない。
 7日未明、ガザから侵入したハマス戦闘員の奇襲攻撃で警察署が占拠され、治安部隊は戦闘員と銃撃戦の末、警察署を爆破した。「本来市民を守るはずの警察がやられた」。ヤコブ・イドリーさん(69)は喪失感を吐露し「多くの市民は同じ気持ちだ」とつぶやいた。
 イドリーさんの隣家の納屋にはロケット弾が直撃し、兵士や消防隊が消火に追われていた。その間もロケット弾が飛来し、作業は中断を余儀なくされる。「1時間に1~2回は避難する」とイドリーさん。夜は自宅地下のシェルターで寝る。
 高台からはガザの街並みが見える。イスラエル空軍が次々と空爆、鈍い爆音とともに巨大な火の玉が現れ、灰色の煙が空高く上っていく。巨大な煙を見ていると、ガザに住むパレスチナ人の友人女性から記者のスマートフォンにメッセージが届いた。「私は無事。どうかガザのために祈って」
イスラム組織ハマスとイスラエル治安部隊との銃撃戦の末、爆破された警察署=9日、イスラエル南部スデロト