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医療崩壊 深まる危機 ガザ 物資不足、あふれる避難者


医療崩壊 深まる危機 ガザ 物資不足、あふれる避難者 イスラエル軍の空爆で負傷し、病院に運ばれる市民=16日、パレスチナ自治区ガザ(ゲッティ=共同)
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 【エルサレム共同】イスラエル軍の大規模攻撃が続くパレスチナ自治区ガザで人道危機が深刻化している。燃料や医薬品が不足し、病院は事実上の医療崩壊。イスラエル軍の圧力でガザ北部からの避難を余儀なくされた市民は約60万人に及び、避難先の南部にあふれ返る。「助けて」「電気を、燃料を」。市民は悲痛な訴えを上げる。 (1面に関連)
 9日にガザへの電気や食料、燃料を遮断する「完全封鎖」を宣言したイスラエルは15日、ガザ南部への水供給再開を表明したが、実態は不明。イスラエルによる強制的な避難通告には国際社会から国際人道法違反だとの批判が相次ぐが、イスラエルは無視している。
 アラブメディアによると、ガザ最大級の医療機関、中部のシファ病院は通常500床だが、現在は千人近い患者が入院、多くは廊下に横たわる。ガザ唯一の発電所も燃料不足で機能不全に陥り、自家発電に頼る状況だ。
 「燃料のなくなった病院は集団墓地と化す」。アブサルミヤ院長は「医薬品も医療機器も不足し、集中治療室(ICU)は満員だ」と明かし、燃料が枯渇する可能性もあると強調した。
 入院患者らの大規模搬送は非現実的なため、避難をあきらめ、残留を決めた病院もある。北部のカマルアドワン病院のアブサフィーヤ医師は「ICUに7人の乳児がいる。避難できないので、彼らはわれわれの治療の下で(攻撃を受け)死ぬことになる」とAP通信に語った。
 約60万人の市民の避難先となった南部では、生活スペースの確保が大きな課題だ。大半は国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)運営の学校のほか、親戚や友人宅に身を寄せる。14日に中部ガザ市から南部ラファの友人宅に身を寄せたランダさん(31)は取材に「6人家族の所に今は19人いる。明日はさらに5人増える。24時間停電で、マットレスも水も足りない」と語った。南部ハンユニスのパン屋で働く男性は「小麦も水も足りず、間もなく閉店する」と力なく肩を落とした。

イスラエル軍の空爆で負傷し、病院に運ばれる市民=16日、パレスチナ自治区ガザ(ゲッティ=共同)