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あふれる難民 足りぬ物資 人道危機のガザ南部 「傍観しないで助けて」


あふれる難民 足りぬ物資 人道危機のガザ南部 「傍観しないで助けて」 イスラエル軍が示した避難ルート、イスラエル・エルサレム、テルアビブ、ガザ地区、ラファ検問所、ハンユニス
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 【ハンユニス共同】廊下にも、教室にも避難民があふれる。乳児を抱えた女性、泣き叫ぶ子ども、車いすの老人…。16日、パレスチナ自治区ガザ南部ハンユニスで、避難所となった学校に共同通信の現地通信員が入った。大規模攻撃を続けるイスラエル軍の通告で避難を余儀なくされた多数のパレスチナ人が身を寄せる。「食べ物も水もない」「傍観しないで助けて」。物資は極度に不足し、人道状況は危機的だ。 (1面に関連)
 教室に敷き詰められたマットレス。約16平方メートルの広さに20人以上が身を寄せる。日中の日差しは厳しく、最高気温は25度を超える。中部ガザ市から避難した女性アリーファさん(51)は「夫は糖尿病だが、薬はない。子どもが病気になっても病院に行ける状況ではない」とうなだれた。
 イスラエル軍の避難通告でガザ中部以北から約60万人が南部のハンユニスやラファに移動。大半が国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)運営の学校や親戚宅などに身を寄せる。南部の人口は、大規模戦闘開始前の約10倍にふくれあがった。イスラエルが電気や食料、燃料を遮断する「完全封鎖」を続け、物資不足は著しい。
 多くの市民の食事は1日1回。主な食べ物はパンとひよこ豆だ。近隣住民が路上で炊き出しを行い、学校にいる市民に配布している。パン屋はかろうじて開いていても、現金がない避難民も。銀行が空爆で破壊され現金を入手できないのだ。
 深刻なのは水不足。イスラエル政府はガザ南部への水供給再開を表明したが、実際に使える水は限られ、井戸水を使う市民も。ガザは海に面し、塩分が含まれるが、学校に避難するアハメドさんは「ほかにどうしろというのか」と訴える。
 水不足はトイレにも影響する。避難所の学校でも流れない便器が多く、汚物があふれ、衛生環境は劣悪。世界保健機関(WHO)幹部は16日「あと24時間で水や電気、燃料がなくなる」と語る。
 16日には支援物資がエジプト側から供給される予定だったが、イスラエルが認めていない。イスラム組織ハマスとイスラエル軍はこれまでに何度も戦闘を繰り返してきたが、エジプト側から物資搬入ができないのは初めてだ。一度南部に避難したが、居場所がなくガザ市に戻った市民もいる。
 中部デールバラハの避難所で女性ファトマ・ムーサさんは「親戚が空爆で死亡し、身元確認のために病院に行った母と連絡が取れなくなった」と天を仰いだ。ラファに避難したアダムさん(31)は訴えた。「国際社会はなぜ傍観するのか。どうか助けて」

イスラエル軍の攻撃で負傷した子ども=16日、パレスチナ自治区ガザ南部ハンユニス(ゲッティ=共同)
学校に避難する人々=16日、パレスチナ自治区ガザ南部ハンユニス(AP=共同)